2022 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of Common Value Added Tax in the European Communities: Study of the sixth EC VAT directive
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20K22099
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小西 杏奈 帝京大学, 経済学部, 講師 (70795921)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 付加価値税 / 欧州統合 / 租税協調 / 税の公平性 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である当該年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で前年度に実現できなかったベルギーおよびフランスでの資料収集を行い、EC型付加価値税制の創設を定めたEC理事会六次指令(1977年)の策定過程を分析した。この成果の一部を、自身が企画者の一人としてかかわったWorld Economic History Congress(国際学会、パリ)のセッションと政治経済学・経済史学会秋季学術大会(東京)で報告した。また、六次指令の前史として位置づけられる一次指令(1967年)の策定過程に関する査読付き論文を社会経済史学会の学会誌『社会経済史学』に掲載することができた。 本研究課題の研究期間全体(2020-2023年度)を通じて、1)1969年のハーグ会議および1970年の決定により、将来的に共通付加価値税がEC予算の独自財源になることが確定し、この統合の深化の動きが原動力の一つとなってEC型付加価値税制の創設が目指されたこと、2)その中で付加価値ベースは、加盟国の経済力を的確に反映するものであり、EC予算において公平な収入源であると考えられたこと、3)その一方で、各国間で多様な付加価値税の課税ベースを共通化することは困難で交渉は難航し、完全な共通化は実現しなかったこと、4)この背景には、1973年にECに加盟しながらも、付加価値税をECの共通税とする動きに歯止めをかけようとしていたイギリスの圧力があったことを一次資料に基づいて明らかにした。 理念型としてのEC型付加価値税とその実態の乖離およびその乖離の要因も明らかにした本研究課題の成果は、これまでの付加価値税制研究だけでなく、欧州統合史研究にも新たな論点を提示するものである。
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