Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 二国のイールドカーブのデータからいかにして計算負荷の小さい方法で情報を抽出するかに加えて, 二国のイールドカーブから抽出した情報がどの程度外国為替レートの変動を説明することができるのかについて明らかにすることである. 最終年度では, 初年度から継続している研究の解析結果を論文としてまとめ, 査読付きの英文学術雑誌への投稿を行い, 採択された. これまでの先行研究では金利の期間構造モデルや主成分分析といったモデルや計量手法にもとづいた方法で二国のイールドカーブのデータから情報抽出を行っていた. しかしながら, それらの方法には, モデルの推定負荷が大きいことであったり, 主成分の解釈の必要性であったりと, いくつかの課題が存在していた. そこで本研究では, 代替的に利用される実証的イールドファクターの定義を二国のイールドカーブに応用し, 定義式から二国の相対的なイールドカーブファクターを抽出することで, 二国のイールドカーブのデータから計算負担が小さく, かつファクターの解釈が可能な情報抽出方法を提案した. さらに, 抽出した相対的なイールドカーブファクターを利用して将来の外国為替レートとの関係について分析を行った. その結果, 本論文の方法論にもとづいて抽出した米国と日本及び, 米国と英国の相対的なイールドカーブファクターは, Chen and Tsang (2013) の方法論にもとづいて抽出した相対的なイールドファクターよりも将来のドル円レート及びドルポンドレートの変動について強い説明力を有することが明らかになった. しかしながら, これまでの先行研究と同様に二国のうちどちらのイールドカーブの変動が外国為替レートの変動を説明するうえで重要な役割を担っているかといった識別の点で課題が残っている. この課題を解決するためのモデル構築は, 今後の課題である.
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