2021 Fiscal Year Research-status Report
The influence of real earnings management on economic welfare
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20K22112
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
伊瀬 堂人 摂南大学, 経営学部, 講師 (20880701)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 利益調整行動 / 実体的裁量行動 / 経済的厚生 / 構造推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本企業を対象に、利益調整行動の一つである実体的な利益調整行動(実体的裁量行動)の手法を特定化し、実体的裁量行動により生じる経済的影響を金額ベースで定量化することである。実体的裁量行動とは、特定の目的で広告宣伝費や研究開発費などを恣意的に削減し、利益を調整する行動である。経営者の利益調整行動により恣意的な報告が行われた場合、投資家が適切な意思決定を行えず最適な資源配分が阻害されるため、経済的厚生、すなわち資源配分の効率性が損なわれる可能性がある。そこで本研究では、実体的裁量行動が将来的な経済的厚生に与える影響を金額ベースで定量化する。 本年においては、理論モデルの構築を行った。具体的には、経営者の実態的裁量行動に関するモデルおよび経営者の実態的裁量行動を踏まえた投資家の行動に関するモデルの構築を行った。 日本企業を対象に実体的裁量行動を検証している文献はいくつか存在しているものの、当該行動が社会にもたらす影響を考察している文献は少ない。しかしながら、実体的裁量行動は社会の資源配分効率性に影響を与えている可能性があるため、合理的な資本市場を構築するためにその影響を精緻に分析することは意義があると考える。 次年度に関しては、本年に構築した理論モデルの妥当性を検証し、その後に構築した理論モデルに基づいた実証分析を行い、実態的裁量行動により生じる経済的厚生に与える影響を金額ベースで定量化する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実体的裁量行動を考慮した経営者および投資家の利潤最大化問題に関する包括的な理論モデルの構築を行ったが、その整合性を検証するために参加予定であった学会あるいは研究会の参加を新型コロナウイルス感染拡大に伴い、見送った。これにより、理論モデルの検証および研鑽が予定よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
理論モデルの研鑽および理論的妥当性の向上を図るために、分析的研究に精通している会計研究者が参加する学会および研究会に参加することを予定している。 そして、理論モデルの妥当性が担保された段階で、実体的裁量行動が経済的構成に与える影響をアーカイバルデータを用いて検証する。また、過去のリーマンショック等の経済的に大きなショックがあった年度のデータを用いて、景気変動を考慮した経営者の実態的裁量行動に関する意思決定問題へと拡張することで、新型コロナウイルスの流行に起因する経済的厚生への影響を予測することを試みる。この分析結果を学会等で報告し、最終的に査読付雑誌へ投稿を行い、2022年度における国内外での掲載を目指す。
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Causes of Carryover |
物品費に関しては、本年度に実行する予定であった実証分析を、進捗が遅れたため次年度に見送り、また旅費に関しては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、参加を見送ったため、当初の予定と差異が生じている。
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