2020 Fiscal Year Research-status Report
Analyses on Multinationals' Tax Avoidance and the Arm's Length Principle: Viewpoints from Product Differentiation
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20K22122
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大越 裕史 岡山大学, 社会文化科学研究科, 講師 (90880295)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 移転価格 / 独立企業間価格原則 / 製品差別化 / 研究開発投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間初年度は、これまでの報告で得られたコメントに基づいて論文の改訂を行いディスカッション・ペーパーの刊行に向けた準備をするとともに、研究期間2年度目に注力する研究の基礎的な分析を開始し、研究期間2年度目の国際学会での報告のために投稿を行った。 第一の研究(A)では、多国籍企業の租税回避行動と水平的製品差別化の関連を理論的に分析しており、拡張的分析をさらに進めた。特に、移転価格に関する研究的関心は近年高まっており、多くの研究が発表されるようになっているため、それらとの研究の関連についても論文の加筆を行った。既存の研究では、投資行動を行った結果として多国籍企業の租税回避が促進する可能性を論ずる研究が多かった中、本研究では租税回避のために投資を増やすという本研究結果は租税回避と研究開発投資に関する新しい視点を明確化しており、得られた政策的含意は大きく、ディスカッション・ペーパーとしての発表した。 第二の研究(B)では、垂直的製品差別化の観点から、多国籍企業の租税回避行動の影響について分析を開始した。研究(A)と同様に、租税回避の機会の増加は高品質財を生産する多国籍企業の財の質を向上させるための研究開発が促されることが判明した。これは、同産業の低品質財と少しでも品質の違いを生み出すことで、独立企業間価格原則の適用を困難にし、租税回避がしやすくなるためである。第一の研究とは異なり、第二の研究では租税回避を行うことができない低品質財を生産する企業の質の向上に向けた投資への効果も分析することができ、多国籍企業が行う租税回避行動の副次的な効果を得ることができた。このような新しい結果は、本研究のポテンシャルを示しており、研究期間2年度には、さらなる拡張的な分析が期待される。 また関連研究として、新経済地理学と移転価格の融合研究の改訂を行い、ディスカッション・ペーパーの更新を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、上述の2つの研究(A)と(B)を遂行することを計画している。当初の研究計画では研究期間初年度末までに、研究(A)についてはディスカッション・ペーパーとして発表することを、第二の研究については基礎的な分析を行うことを目標としていた。 研究(A)をディスカッション・ペーパーとして発表することに予想以上に時間がかかったものの、発行が完了しており、研究機関2年度目の国際学術誌への投稿段階にある。さらに研究(B)についても目標としていた初期段階の分析は済んでおり、8月には国際学会での報告が決定している。研究期間2年目に行う拡張的分析に関連する文献のサーベイに着手しており、研究の拡張方針について検討を行っている。 以上の理由より、当初の研究計画についてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間最終年である2年目は、研究(A)を国際学術誌への投稿を行い早期の学術誌掲載を目指す。研究(B)については年度末にディスカッション・ペーパーとして発表することを目標に、年内の報告を進めていく。特に、研究(A)との差別化を図るため、研究(B)の拡張的議論の方向性について慎重に分析を行っていく。
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Causes of Carryover |
以下の2つが想定以上に生じた使用額の理由としてあげられ、そのための調整により次年度使用額が生じることになった。(1)本研究を計画した当初は対面報告のために旅費の申請をしていたが、コロナウイルスの影響で実際に対面報告を行うことができず、旅費申請に充てるはずだった金額をオンライン学会参加のための機材購入に利用した。例えば、当初予定していたディスプレイよりも大きめのディスプレイを購入したり、映像処理をスムーズするためにスペックの高いデスクトップパソコンなどの想定額以上の物品購入を行った。(2)また、本研究課題の関連研究である論文が長くなったため、英文校閲費用が想定よりも高かった。 以上の結果、当初であれば購入予定であった数値解析ソフトであるGAMSやScientific Workplaceのライセンス購入のための予算が不足したため初年度の購入を見送り、書籍などの少額で購入できる物品の購入を優先的に行った。 次年度は上述のライセンスの購入に加えて、論文の国際学術誌への投稿料の発生が見込まれる。さらに研究報告の旅費の支出が多い計画であったものの、依然として出張の見込みは立たないため、初年度の経験をもとに学会報告を効率的にする有形設備の購入を行う。
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Research Products
(5 results)