2020 Fiscal Year Research-status Report
耐久財の経済寿命の変化がカーボンフットプリントに与える影響の実証分析
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20K22124
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
中本 裕哉 大分大学, 経済学部, 講師 (10881881)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 自動車 / カーボンフットプリント / 製品寿命 / ライフサイクル分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
製品の寿命は、製品製造から廃棄までの生存(廃棄)率を示す物理的寿命と、購入から買い替えまでの保有(買い替え)率を示す経済的寿命の2つに大別される。温暖化緩和策の一つとして製品の長期使用が促進されている。重要なことは、自動車の物理的寿命の変化は供給側(例: 自動車産業)の技術革新や製品設計、自動車の経済的寿命の変化は需要側(例: 自動車保有者)の買い替え行動が深く関わっている。 本年度は、(1) 物理的寿命および 新車と中古車の経済的寿命をそれぞれ推計し、組み合わせることで当該車両が中古車として社会に生存していく様子をモデル化し、(2) 外生的な耐久性を考慮した新車・中古車に関する買い替え行動を組み込んだ包括的なカーボンフットプリントの分析手法を開発を行った。 日本における1990年から2016年の間に登録された新車と中古車に焦点を当てたケーススタディの結果から、車の物理的寿命、新車の経済的寿命、中古車の経済的寿命の10%の延長が自動車のカーボンフットプリントをそれぞれ28.7Mt、29.3Mt、4.2Mt減少させ、その一方で、車の物理的寿命、新車の経済的寿命、中古車の経済的寿命の10%の短縮は40.7Mt、29.4Mt、4.4Mt増加させることを発見した。言い換えれば、この結果は、新車と中古車の寿命の延長が温暖化緩和に寄与することを示している。政策決定者は自動車使用時だけでなく“自動車寿命を考慮した自動車ライフサイクル全体”での排出削減に注力しなくてはならない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果については、2021年3月にオンライン開催された第16回日本LCA学会研究発表会にて、「自動車の経済的寿命がカーボンフットプリントに与える影響の実証分析」という題目で口頭発表を行った。 また、現在までの研究成果については英語論文として取りまとめJournal of Industrial Ecology誌(2019 IF:6.539)に2021年1月に投稿し、現在査読コメントへの対応中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度までのライフサイクル分析フレームワークに、多地域産業連関分析および貿易統計に基づく新車中古車の輸出台数を連動させることで、自動車のグローバルサプライチェーンを通したCO2排出量を推計する。 さらにシナリオ分析によって、消費者の買い替え行動、次世代自動車の普及構造、新車・中古車の貿易構造の変化が自動車のライフサイクル全体を通したグローバルCO2排出量に与える影響を推計する。結果から自動車のグローバルサプライチェーンに誘発される環境負荷の削減に向けて具体的な政策提言を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)コロナウイルスの感染拡大による出張の取りやめ
(使用計画)オンラインミーティングや学会に使用する通信機器等の整備
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