国際貿易における気候変動の影響と適応に関する実証分析

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K22127
• Research Institution: Chiba University of Commerce
• Principal Investigator: 天畠 華織 千葉商科大学, 商経学部, 講師 (10879703)
• Project Period (FY): 2020-09-11 – 2022-03-31
• Keywords: 気候変動 / 自然災害 / 災害被害 / 気候変動適応 / 気候変動の影響 / 国際貿易 / 計量経済分析

Outline of Annual Research Achievements

本年度は、気候変動の経済的影響に関する先行研究をサーベイするとともに、貿易と災害に関するデータの整理をおこなった。具体的には、輸出国から輸入国への貿易額のデータ、自然災害に関する場所と発生期間に関するデータなどがある。収集した二国間データである貿易データとイベント毎にまとめられている災害データを整理して、月次・二国間で構成される独自のデータセットを作成した。そして、これら収集したデータを用いて計量経済分析をおこなった。予備的な分析の結果、自然災害の発生が二国間の貿易に負の影響を与えることが明らかとなった。また、こうした災害被害は被災後数ヶ月に渡ってみられることも示された。さらに、災害に関する貿易損失は発展途上国や農業分野においてより顕著であることもわかった。これらの結果は、貿易活動についても気候変動の影響がみられることを明らかにし、国の経済レベルや産業によって気候変動への脆弱性に関して多様性があることを示唆している。現在は、これらの結果をふまえさらに詳細な分析を進めている。特に、自然災害への適応に着目した分析を進め、気候変動適応に関する提言ができるような研究成果に達することを目指す。
こうした研究実績に関して、本年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、研究報告や協力研究者との研究打ち合わせの機会を十分に得ることができなかった。次年度も新型コロナウイルスの影響は今後も続くと考えられるものの、引き続き貿易と災害のデータを用いた分析を計画通り実行し、最終年度として研究成果をまとめる。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

これまでに、計量経済分析に必要な貿易や災害に関するデータを収集してデータセットの構築をおこなった。分析に用いる計量モデルとデータセットの性質上、膨大なデータを扱っているが、分析用に新たに購入したソフトウェアを活用して効率的にこれらの作業を進めることができている。また、これまでの研究でも類似したデータベースを構築して分析に用いてきたことから、本研究の遂行にもその経験が活かされている。
一方で、本年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、通常時と比べて研究会や学会への参加がオンラインとなるなど限定的であった。そのため、本研究課題についてのアウトプットおよびインプットの機会を十分に得ることができなかった。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究では、主に次の二つの点に取り組む。第一に、分析に関してはこれまでの研究結果の頑健性を確認するとともに、自然災害への脆弱性や適応といった観点からさらなる検討をおこなう。これまでの分析では、予備的な結果として自然災害が貿易活動に与える被害について把握することができたが、それに加えて災害被害を軽減するような対策の効果についてまでは十分な検討がおこなわれていない。そこで、自然災害による被害を評価するだけでなく気候変動影響の適応策についても言及できるよう、自然災害への脆弱性や適応に関するデータを取り入れた計量経済分析を検討中である。
第二に、上記の分析結果をまとめて論文を執筆する。ヨーロッパの環境経済学分野の国際学会や国内の環境経済・政策学会などに積極的に論文を投稿し、研究発表の機会を得る。さらに、2年間の研究のまとめとして環境経済学分野の国際誌への論文投稿を目指す。

Causes of Carryover

新型コロナウイルス感染症の影響で研究会、学会、研究打ち合わせ等に旅費を使用せず、また予定していた一部の物品購入を次年度に延長したため。次年度はすみやかに必要な物品を購入し、データ整理と分析の効率化を図る。