2020 Fiscal Year Research-status Report
交通インフラの整備と通勤における混雑が企業の活動に与える影響の分析
Project/Area Number |
20K22128
|
Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
安達 有祐 國學院大學, 経済学部, 助教 (80881242)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | 交通インフラの整備 / 混雑 / 企業の行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、通勤における混雑が企業の立地選択や生産性の上昇に与える影響を理論と実証の両面から明らかにすることにある。本研究の目的を達成するために、以下の手順で研究を進める。 まずは、企業の立地選択に関して産業ごとの異質性を考慮に入れたモデルを提案する。このモデルにより、集積の外部性と混雑からの影響を考慮に入れた企業の立地選択モデルを提案する。次の実データからの分析を行うために、インフラ整備を行った際にどのような産業の企業が郊外へ移動するのか、中心に残り続ける産業はどのようなものなのかを明らかにする。 次に、理論モデルの妥当性を検証するために、インフラ整備が都市圏内の企業の立地選択に与える影響を産業ごとに分析する。集積の外部性にのみ着目した先行研究から得られた仮説か、構築した理論モデルから得られる仮説のどちらがデータから支持されるかを検証する。 さらに、構築したモデルに実データを当てはめ、パラメータを構造推定する。この推定により、混雑がどれほど企業の立地選択に影響を与えるのかを明らかにすることができる。また、反実仮想の分析を行い、混雑を緩和する政策のうち企業の生産性を上昇させるようなものを示すことができる。 本研究は、以上のような手順で進めていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずは、2つ目のインフラ整備が企業の立地選択に与える影響について、東京都市圏を対象に実データから分析した。本研究の分析にあたり、交通インフラが整備されていること、その整備が通勤のみに影響すること、整備されたインフラが都市圏内の通勤手段の中でよく使用されていることの3点を満たすようなデータが必要になる。本研究では以上の3点を踏まえ、東京都市圏を分析の対象とした。ただし、今回の分析では企業数の代替変数として、産業別の雇用者数を用いることとした。得られた結果によると、集積の外部性のみに着目していた先行研究から導出された仮説とは異なる結果が出ており、企業の立地選択に混雑が影響していることが示唆された。この分析結果をまとめ、論文作成を行った。論文執筆に取り組むとともに、先行研究の帰結とは異なることを示すことができ、今後の研究の方針が固まったことから「(2)おおむね順調に進展している」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、1つ目の理論モデルの構築と、3つ目の構造推定を同時に行うこととする。ただし、分析を行うにあたりインフラの整備が企業の立地に与えた影響をモデルから推定し、2つ目の研究で得られた分析と整合的な結果が得られることを確認する。その後、混雑を緩和する様々な政策を反実仮想の分析を用いて比較検討する。
|
Causes of Carryover |
コロナにより学会での発表機会がなくなったため、出張に行かれなかった。本年度は、分析用ソフトウェアの購入等を行う予定である。
|
Research Products
(2 results)