2021 Fiscal Year Research-status Report
災害リスクに対する主観的リスク認知の更新メカニズムと防災行動に関する分析
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20K22132
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
安田 昌平 日本大学, 経済学部, 助教 (10875686)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 主観的災害リスク / 客観的災害リスク / 防災行動 / アンケート調査 / ベイズ更新 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度においては、リスク情報の提供と主観的リスク認知の関係について、主に実証研究を中心に既存研究を整理した(Smith and Johnson(1988),Cameron(2005) ,Rheinberger and Hammitt(2018)など)。また、既存のアンケートデータを用いて、主観的リスク認知と客観的リスク認知の間にあるとされる認知バイアスを検証した。具体的には、発生確率の低い事象を過大評価、高い事象を過小評価するという既存研究の結果((Lichtenstein et al.(1978),Viscusi et al.(1997),Armantier(2006))を、本アンケートデータを用いて再現することが出来た。本アンケートデータでは、追加情報として地震確率を与え、その前後における主観的リスク認知を答えさせている。その結果、事後の主観的リスク認知は追加情報に近づく形で更新されることが明らかとなり、その影響度は事前の主観的リスク認知と追加情報の乖離が大きいほど逓減することが分かった。さらに、内生性の問題を十分に考慮して分析した結果、追加情報が防災行動および主観的リスク認知に与える影響は、OLSに比べて操作変数法を用いることで概ね小さくなることが明らかになった。個人属性でサンプルを分割し、異質性も考慮したところ、若年、男性、単身以外(有配偶)、低所得、被災経験あり、危険回避的な対象者ほど追加情報の影響が大きくなる傾向が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度までに、既存研究の整理およびアンケート設計の基礎を作成することが出来ている。一方で、実験的なアンケートを行うために、十分な議論をする必要があり、研究倫理の観点からも再度精緻化する必要が生じたため、アンケートの実施が遅れている。 以上のように、アンケートの実施が遅れているため「遅れている」と言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果より、災害リスクの追加情報は防災行動に影響を与えることが明らかになった。しかし、これまで想定していた災害は地震のみであり、近年影響が大きい水害については考慮していなかった。そこで、今後は水害に関する主観的リスク認知と防災行動について焦点を絞り、アンケート調査を早急に実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度において、アンケート調査を実施する予定であったが、アンケートの作成において精緻化を行う必要性が生じたため、アンケート調査を実施できなかった。したがって、次年度使用額が生じた。次年度ではアンケート調査を実施するため、次年度使用額のほとんどをアンケート調査に用いる計画である。
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