2022 Fiscal Year Research-status Report
制度論的アプローチによる組織の長期的存続プロセスの理論的・実証的解明
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20K22137
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
古田 駿輔 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (40879673)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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Keywords | 新制度派組織論 / 制度維持 / 歴史分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
理論的及び歴史分析を進めるにつれて、概念的な視座を正統性から制度維持へと変更しつつ進めている。主に①追加的な調査、②学会報告、③執筆の3軸で研究を行った。 ①追加調査:愛知県や高知県の酒蔵を訪れ、インタビュー調査を行った。インタビュー調査では、「名門」というコンセプトに着目し、組織としての酒蔵がどのように名門という位置づけを維持しながら存続しているのかについて追加的な調査を行った。調査結果としては、酒蔵はむやみに拡大志向を目指すのではなく、地元との関係を大切にしながら存続していることが明らかになった。 ②会報告:本年度は、経営哲学学会関東部会(6月・関東部会)とBritish Academy of Management(9月・マンチェスター大学)で学会報告を行った。経営哲学学会では、「制度維持メカニズムの探索」という報告タイトルで研究報告を行った。制度維持の理論的前提に重きを置きながら、制度維持のレビューも兼ねた学会報告を行い、制度維持の回帰メカニズムの提示を行った。British Academy of Managementでは、” Exploring the role of history in the institutional maintenance process: Case of the Godzilla movie in Japan”という報告タイトルで学会報告を行った。こちらは、制度維持の回帰メカニズムという理論モデルを提示した報告である。 ③執筆:書籍の分担執筆およびBAM2022conferenceのproceedingsを出すことができた。書籍の分担執筆では、「経営戦略ハンドブック」、「アントレプレナーシップの原理と展開」の第12章「アントレプレナーシップの制度化」の執筆である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、理論的な概念枠組み構築と定性的な実証研究(歴史分析)を並行して進めることができた。理論的な概念枠組みでは、これまでの研究成果の一つとして制度維持の回帰メカニズムを提示できた。また、国際学会で査読付きフルペーパーとして採択され、学会発表することができた。そして、追加的な調査として酒蔵に対するインタビュー調査を行い、制度維持は異質性を背景としていること、組織は制度を維持する際これまで活動してきた基盤やロジックを重視することも確認できた。さらに、書籍ではあるものの、『経営戦略ハンドブック』で制度戦略などを担当し、『アントレプレナーシップの原理と展開』では、「アントレプレナーシップの制度化」として、ドメインなどの概念を用いながら制度的企業家とステークホルダーの関係性構築について仮説的な命題を提示できた。これらの点を踏まえると、前年度よりはよりは概念的枠組みをクリアに構築できただけではなく、conference論文や学会発表、書籍として形にできているため、研究を前進させたといえるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、①歴史分析による回帰メカニズムの精緻化、②本格的な論文執筆作業を並行して進めていくことが必要である。①については、回帰メカニズムの精緻化について、精緻化のための歴史分析をする必要がある。研究分担者だけではなく、指導教員および学外の定性研究を専門としている研究者に助言を求めながら、さらに事例に検討を加え、より多面的に回帰メカニズムを精緻化していかなければならない。②に関してはまず事例の分析を通した制度維持の仮説拡張を目的とした論文や歴史分析による論文の執筆などを進めていかなければならない。基本的には博士論文の提出を目的として国内の学術雑誌を中心に投稿先の選定と論文の最終化を行う。なお、余裕があれば、海外学術雑誌についても検討することも考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響やその他の要因により、予定していた調査の実施などが難しかったため、次年度使用額が生じることとなった。本年度では、調査や資料収集を追加的に行いながら、研究を進めていく。
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Research Products
(4 results)