2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22139
|
Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
中野 諭 日本福祉大学, 経済学部, 教授 (80458950)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | マネジメントのスマート化 |
Outline of Annual Research Achievements |
生産関数を基礎として組織資本と生産性の関係を分析する国内外の研究には蓄積があり、組織資本の蓄積が生産性向上に寄与することが確認されている。本研究で対象とするマネジメント部門も組織資本の1つとして考えられている。しかし、マネジメント部門と生産性を結ぶ経路やマネジメント部門の充実が生産性を向上させるメカニズムは十分に明らかにされてこなかった。 そこで今年度は、経済産業省「企業活動基本調査」の個票データや時系列産業連関表を用いて、マネジメント部門と企業の生産構造や生産性との関係を確認した。生産関数の推定結果によれば、マネジメント部門に関連する1次・2次情報サービス部門では労働に関して中程度の、資本に関しては低めの規模の経済性が確認された。これらの部門では規模拡大による生産費用削減は現状でも見込まれ、情報通信分野の規制改革、情報プラットフォームの形成などの技術変化がこの効果を補強していくかどうか検討が必要である。また、情報サービス部門、とりわけ1次情報サービス(基礎的情報提供型)部門では労働分配率が相対的に高く、一般サービス(基礎的情報活用型)部門は資本分配率が高かった。1次情報サービス部門ではコンピュータ機器の価格低下を効率性改善の原動力とし,一般サービス部門では低廉化したコンピュータ機器をさらに活用することとで効率性改善をしていると考えられる。そして、マネジメント部門が企業の生産性に正に寄与すること、マネジメント部門の中でも本社の研究開発部門および調査・企画部門の貢献度が高いことが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は経済産業省「企業活動基本調査」の個票データを用いて企業のマネジメント部門に関わる記述統計量の観察と回帰分析を行い、早稲田大学先端社会科学研究所のワーキングペーパーとしてとりまとめることができた。また、時系列産業連関表を用いた投入物間の代替弾力性の計測を通して、次年度実施予定の価格波及シミュレーションに向けたモデル構築の準備を進めることができた。ただし、オンラインでの研究会やヒアリングで代替したものの、新型コロナウィルスの影響によって他の研究者との意見交換の機会が予定していたよりも少なくなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、経済産業省「企業活動基本調査」の個票データを用いた分析の精緻化とICTの導入による価格波及シミュレーションのためのモデル構築を進めている。 今後は、新たなICTの導入がトリガーとなる価格波及のシミュレーションを実施し、マネジメント部門の提供するサービスや他の財の価格がどの程度低下するか、また結果として経済指標がどの程度改善されるかを確認する予定である。新型コロナウィルスの影響次第ではあるが、他の研究者との意見交換も増やしていきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
処理データのサイズが想定よりも大きかったため、一部資金を次年度に繰り越し、より演算速度の速いシミュレーション用統計ソフトウェアを調達する予定である。
|