2021 Fiscal Year Research-status Report
"Theories of Motive" in Organizations
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20K22141
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
樋口 あゆみ 福岡大学, 商学部, 講師 (30882740)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | システム論 / 組織論 / コンテンツ / 意味生成 / 組織境界 / 意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではコンテンツ企業のフィールドワークで得たデータから、企画の形成過程を分析することを通じて、(1)個人が企画を着想し、それが組織的な協働へと発展していく過程で語られる理由の変遷と、(2)そうした過程の組織的な解釈・回顧がどのように行われ、それがどのように組織の意味的な境界を動的に生み出しているかを明らかにする。 今年度は昨年に引き続き、(2)に関する理論的研究を進め、実績として公開した。『21世紀の産業・労働社会学』に寄稿した論文では、N.ルーマンの理論研究をもとに、組織境界についての新たな見方を提示した。コンテンツ企業は、プロジェクトをもとにして外部企業との協業を多く行う特徴を持つが、そうした外部への解放性と、組織内の秩序維持という意味での閉鎖性とをどのように動的に描くかは、組織論においても重要な課題となっている。そうした課題に対して、本稿は一定の見方を示すものである。また本稿は組織の境界に関する議論ではありつつも、システム境界への議論の理論的寄与をも含んでいる。その意味で、組織以外のカテゴリーやシステムの境界を検討する際にも、応用可能性がある。 さらに2年前に学会発表を行ったルーマンの2値コードに関する研究を、国際的な査読雑誌に掲載することができた。これは個人のコミュニケーションをどのように理解し、帰属するかという問題を含み、その意味で研究課題の(1)を下支えする論考である。 また、昨年から進めていた時間に関する理論論文は、今年度中に科研費報告書としてまとめられる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述のように、昨年度は国際誌への掲載、書籍への寄稿を含む業績を出すことができ、理論的な研究を深めることができた。その一方で、査読対応などに想定以上に時間がかかり、データを分析する作業に遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、当初計画されていた部分に関しては、経験的分析のための理論研究は必要に応じて続けつつ、これまでの成果をまとめる必要がある。そのため、来年度はこれまでの理論的成果を実証分析に適用する作業に時間を割く予定である。 それに加えて、当初は予想していなかった研究の発展可能性や、他の研究者との協業可能性も見えてきた。今後は個人の研究発表だけでなく、研究チームの形成や、新たな研究会を立ち上げ、そうした共同で行う研究の成果も出せるように、分野や所属を超えた研究交流を活発にしていく予定である。すでにルーマンの組織論に関する研究会や、経営学者と社会学者から成る研究会を結成するなどいくつかの下地はつくられつつある。
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Causes of Carryover |
昨年度より引き続き、コロナ渦により、国内外の学会がオンライン化され、また国内移動に制限があったため、旅費の出費がなくなった。一部は計画していた通り、理論的な文献研究のための書籍購入や英語論文投稿のための校正費用に使用した。今年度は状況が回復しているため、(1)延長期間中に延期していた調査や、研究会の開催のための旅費や、(2)データ整理のための人件費を計画的に執行する。
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