2023 Fiscal Year Annual Research Report
"Theories of Motive" in Organizations
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20K22141
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
樋口 あゆみ 福岡大学, 商学部, 講師 (30882740)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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Keywords | システム論 / 組織論 / 意思決定 / 境界 / 時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の問いは、企画立案など事業の経営にあたって人々がどのように説明を行い、それが組織の中の固有の語彙や制度を通して機能するようになるのか、というものであった。本年度はその問いの射程のなかで、固有の語彙や制度と構築し、機能していくようになる組織が、内部の多様な活動を許容しながらもひとつの秩序として成立しているのはなぜかという、より根本的な問いに焦点を当てて研究を進めた。 本年度は大きく分けて二つの論点について研究を進め、成果を公開した。一点目は、「組織境界」という観点から組織論の組織モデルの変遷を歴史的に整理し直すという論点の提示である。組織論はシステムモデルという点では、クローズドシステムからオープンシステムへの転換があったとされている。しかしそれ以降のモデルについては、ポスト官僚制組織やネットワーク組織など、個別形態についての呼称はあるものの、それがいかなるモデルであるのかというコンセンサスはいまだに形成されてない。それは、オープンシステム以降、組織をどういう観点でシステムとして捉えればいいのかの議論が整備されていないからである。申請者はそれについて、自己組織化の議論と、意思決定論を接続したニクラス・ルーマンのシステム論が、組織の閉鎖性と開放性の同時成立を理論的に明示したことを示した。また、それを「閉じたオープンシステム」(クローズドオープンシステム)と解釈した奥山敏雄の議論を、従来の組織モデルの議論と再接続して示した。それらの成果は国際社会学会および組織学会で発表した。 二点目は、組織を情報処理として捉えるサイモン的な組織観に、意思決定自体への解釈の余地を加えることで組織を意味編成のシステムとして捉え直す理論的道筋を整理した。それには不確実性を経済学的なリスク計算から、社会構築的なものとして捉え直す転換が必要となる。この点については日本社会学会にて発表した。
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