2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22145
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒川 すみれ 東京大学, 社会科学研究所, 特任助教 (10883431)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | 職業キャリア / 女性の就業 / 就業行動 / 社会意識 / 職業経歴データ / 系列分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は職業経歴データを用いて系列データ分析を行い、女性のキャリアパターンを類型化した。分析の結果、調査時点で壮年期(35~44歳)である女性のキャリアは、有職女性で8つのパターン、無業女性で6つのパターンに分類することができ、就業継続・中断と転職によって、女性には流動的かつ多様なキャリアがある様子を具体的に描き出すことに成功した。具体的には、初職の雇用形態(主に正規雇用)や職種を移動することなく就業を継続するパターンや、20歳代に正規雇用から非正規雇用へ転換して就業を継続するパターン、就業を辞めて無業状態を継続するパターン、非正規雇用で再就職するパターンなど、キャリアの内容は多岐にわたる。本研究では女性の職業経歴を雇用形態と職種の2つの視点から同時に記述したことで、非正規転換や転職がどの職種間で生じているのかを明らかにした。 さらに、類型化した女性のキャリアパターンを変数として計量分析に応用して、過去の職業経歴が現在の階層帰属意識に及ぼす影響を検討した。分析からは、現在の職種がブルーカラー職種であっても、一定の無業期間をはさんでから非正規雇用労働となる再就職型であるならば階層帰属意識に影響はないが、ブルーカラー職種の継続就業だと階層帰属意識は低くなることを明らかにした。就業を継続してきたか否かによってブルーカラー職種での就業経験の効果が異なることは、キャリアパターンを考慮したモデルによる分析を行うことで明らかとなった知見である。また、過去の職業の下降移動(正規雇用から非正規雇用、ホワイトカラーからブルーカラー)の経験が、現在の階層帰属意識を低下させていることを明らかにした。現在の意識には過去の就業経験が影響しており、分析の際には現職だけではなく職業経歴も考慮する必要があることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点の研究成果は国内学会や研究会で報告が出来ているものの、論文は執筆中であり投稿には至っていない。新型コロナウイルスの影響で本科研や他の研究プロジェクトにも遅れが生じ、研究の進行スケジュールの調整が不十分であったために、研究成果の発信という点では当初の計画よりも若干遅れている。しかし、次年度に予定していた分析には既に取り掛かっており、新たなデータの分析準備も進められていることから、本年度の遅れは次年度で取り戻せる予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度はこれまで使用していたデータ①「職業キャリアと働き方に関するアンケート」(労働政策研究・研修機構)のほか、②「東大社研・若年パネル調査」、③「東大社研・壮年パネル調査」(東京大学社会科学研究所)を新たに加え、分析をすすめる。①の分析では2020年度の分析と同様に、意識変数に生活満足度や就業意識を設定して過去の就業経験が現在の意識に及ぼす影響を検討する。②と③の分析では、就業経験と意識の関連をより深く理解するための補足的な分析として、働き方のパターンごとに意識変数の回答分布の推移を記述し、働き方と意識がどのように連動しているのかを検討する。
|