2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K22145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒川 すみれ 東京大学, 社会科学研究所, 特任助教 (10883431)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 職業キャリア / 女性の就業 / 就業行動 / 社会意識 / 職業経歴データ / 系列分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度の研究成果の発表や論文と、新たなデータセットを用いた補足分析を行った。これまでの分析(労働政策研究・研修機構「職業キャリアと働き方に関するアンケート」調査データを使用した分析)に加え、東大社研パネル「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査(Japanese Life Course Panel Survey)」データを使用して系列分析を行った。女性のキャリアの類型化と、キャリア形成と同時進行する家庭要因や意識の変遷との関連を検討した。 有配偶女性に着目すると、過去14年間の働き方の変化は配偶者(夫)の所得水準とある程度関連していた。無業を継続していた女性の夫は高所得でかつ上昇傾向にあること、就業(正規雇用・非正規雇用の区別に関わらず)継続している女性の夫は所得が中程度水準で安定していること、若年カップルの女性は途中で就業の中断があり、一方で夫の所得は比較的低水準だが上昇傾向にあることなどが明らかとなった。女性は、ライフステージや夫(世帯)の経済的状況によって働き方やキャリア形成の内容に違いがあることが窺える。 階層帰属意識とキャリアとの関連を検討したところ、階層帰属意識の水準の高低にキャリアパターンごとの違いはあるものの、回答傾向が大きく変化することはない。つまり、就業を中断したから、正社員として働き続けたからといって階層帰属意識が上昇したり下降したりするわけではないことを示した。キャリアのあり方が現在の意識に直接及ぼす影響としては、次のような知見も得られた。配偶者の有無によらず、「無業継続」キャリアをもつ女性は現在の階層帰属意識が高いことから、女性の収入が無くても(少なくても)生活を維持できる生活基盤が長期にわたって確保できていることが、階層帰属意識を高める要因になった可能性である。これらの研究成果は学会報告(第94回日本社会学会大会)を行っている。
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