2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of social movements of water resource-Bolivian case
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20K22163
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧田 裕美 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (00882862)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | ボリビア / 社会運動 / 水道事業 / 民営化 / 再公営化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年4月15日に第78回アメリカ中西部政治学会(78th Annual MPSA Political Science Conference Virtual, April 15, 2021)にて「2000年代のボリビア社会運動の解析:エージェント・ベースド・シミュレーションを用いた比較分析”のUnpacking Bolivian social movements in 2000s: Comparative analysis and agent-based simulations”)を発表した。2000年代にボリビアは民衆の抗議行動、すなわち社会運動にて民営化を複数回撤収させ、再公営化させることに成功した。本発表では、2000年に生じたボリビア史上最大規模の民営化反対運動「水戦争(2000)」で、運動参加者の連帯及び離反を時系列としてまとめ、それが運動の規模にどう影響を与えたのかを明らかにした。 1990年代以降、ボリビアを含む中南米では多くの国営企業が民営化され、サービス利用者である国民は民営化に対する不満の意思を示しつつも、大規模な反対運動ヘと結晶化させることができなかった。したがって、ボリビアの水戦争(2000)は社会運動によって初めて民営化を撤回できた南米初の事例として称賛されることが多かった。そのため、運動開始以降、及び社会運動の当事者によって語られることが多く、水戦争を俯瞰した視点からの分析の蓄積に乏しかった。本分析は、複数の社会運動組織がいつ、どのような理由で水戦争に参加したのか、時系列を明らかにしたところ、これまで主に分析されてきた運動の最中ではなく、むしろ運動の開始前の運動組織の連帯や組織の設立目的が、水戦争の大規模化を促したことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年は約2ヶ月間、現地調査を行なったが、入国後の外出制限だけでなく、様々な機関が閉鎖されており、想定よりも資料を集めることができなかった。一方で、一部のインタビューや会議など、オンラインで参加できる機会も増えていた。 本研究は、2000年代に生じた2つの水戦争(2000,2004)を比較することを計画しているが、第二次水戦争に関する資料が不足しており、その不足をどう補うのか苦慮していた。しかし、第二次水戦争当時の政府の公式文書や社会運動組織の内部文書などを、これまでも交流のあった研究者が保持していることが明らかとなった。量が多かったため、昨年の調査のみでは全てをスキャンすることが不可能だったが、引き続き調査に協力してくれることを約束してくれているため、この点に関しては今年の調査を行えば資料が入手できる。 資料収集だけでなく、昨年入手した資料の分析と、これまでの分析を統合する作業も並行して行なっている。特にボリビア東部にて国内で唯一、公営ではなく、協同組合という運営方法で水道事業を行なっている事例に関しても進捗があった。昨年の調査で、協同組合のリーダーへのインタビューを実現できたことで、本研究の枠組みを、社会運動論のみではなく、ボリビア国における水資源管理という視点から分析することが可能となったのではないかと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、3ヶ月間の現地調査を行う予定である。おおよそ9月から12月にかけて行うことを現地の調査関係者にも報告してあるため、昨年よりもスムーズにインタビューや資料収集を行うことが可能となると予想される。現在は、渡航の際に入手するべき資料の順序付けを行なっており、これと並行して、昨年の現地調査で得られた知見からボリビア東部の水道協同組合に関する論文を執筆している。論文を執筆することで疑問点や課題がより明確になっており、これらの点に関しては直接、現地の調査関係者へ再びインタビュー調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該助成が開始した年度は、調査対象国であるボリビアが、新型コロナウイルスの拡大に伴い、外国人の入国を拒否していたため、現地調査を行うことができなかったため。 今年度は昨年度より1ヶ月長い合計3ヶ月滞在する予定であり、より多くの情報を入手できると考える。
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