2021 Fiscal Year Research-status Report
遠隔による音楽活動にかかわる実践的社会課題の相互行為分析
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20K22167
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
吉川 侑輝 立教大学, 社会学部, 助教 (30881429)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 相互行為分析 / 遠隔音楽活動 / エスノメソドロジー / 会話分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、オンライン設備等を利用した音楽活動の相互行為分析を通じてその特徴を明らかにすることを目指している。 2021年度は、COVID-19の影響で開始が遅延していた調査を実施した。具体的には、練習において部分的に遠隔の通信システムを導入している合唱団体へのフィールド調査をおこなっている。データは分析の途上であるが、現時点においては、リハーサル室における会話に遠隔からのコメントなどを通信の遅延などの問題を避けながら付け加えるために取り組まれている技法に焦点をあてている。この問題を避けるひとつのやり方は、文字コメントのような、会話とは異なる様式を備えた情報を利用しながら活動を組み立てることである。分析データからは、以下のことを示唆している。まずリハーサル室における会話にチャットツールなどを用いて文字コメントを追加し遠隔からの情報をリハーサル室におけるやり取りの進行上適切なタイミングでの導入を可能にすることで、遅延の問題を部分的に解消することができる。それだけでなく、リハーサルにおけるコメントの導入状況をリハーサル室のメンバーと遠隔の参加メンバー双方にとってリアルタイムで認識可能にするためのやり方が存在している。 こうしたやり方は、遠隔の音楽活動にともなう遅延などの一般的問題を解消するための重要な示唆を含んでいる可能性がある。 上記の成果の一部は、「もうひとつのポリフォニー:合唱リハーサルのなかの遠隔コメント」というタイトルにおいて、一般向けのウェブ媒体(「web春秋 はるとあき」)において公開されている(2022年4月25日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の基本的な方針は、遠隔によって行われる音楽活動の構造を、それぞれの実施地に赴き映像記録機材を用いて記録分析することである。しかし2020年度についてはCOVID-19の影響により、研究代表者の移動を前提とした調査をすすめることが難しくなったため、遠隔の楽器レッスンを対象とした研究論文等の入念な研究レビューと、調査者がフィールドに直接赴かない方針での調査計画の練り直しなどを行い、遠隔音楽活動(主に楽器レッスン)を実施している音楽家たちから直接録画データなどを提供してもらう内諾を得た。 しかしながら、2021年度は限定的ではあるがフィールドワークが可能となる感染状況が何度か訪れたため、当初の予定通り、実際のフィールド調査を実施することとした。 ただし、依然として厳しい感染状況を鑑みて、多くの場合狭い個室で行われるレッスンでなく、比較的広い部屋で実施されるリハーサルを主たる場面として調査を進めるなどの変更が必要となった。これに伴い、2020年度に実施した、遠隔レッスンを主な対象とした文献レビューとのギャップなども生じたため、そのギャップを補完するためにも検討やフィールドワークなどが必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
こうした状況を鑑み、2022年度には本研究は、主として、以下の3つの作業を行うことになる。 ①、本研究が既に実施した調査(遠隔音楽リハーサル)の成果を、査読論文や国際発表のかたちで、順次報告・公表する。 ②、2020年度に実施した研究文献のレビューの内容などもふまえ、既存の研究(遠隔レッスン)と本研究の調査データ(遠隔リハーサル)との関係を理論的に検討し、追加の調査の方針を定める。 ③、②の内容を踏まえ追加の調査と報告をおこなう。具体的には、遠隔レッスンやオンサイトの音楽活動などのデータも可能な限り収集し、既存のリハーサルデータとの比較検討などを行う。こうしたデータコレクションに基づく検討作業を通じて、遠隔音楽活動一般が備える特徴やその困難の解消方法などを特定し、論文執筆などを行う。
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Causes of Carryover |
2021年度は当初予定していた調査が限定的な仕方においてしか実施できなかったため、次年度使用額が生じた。 2022年度には、2020年度に実施不可であった調査と2021-2年度に実施予定であった調査の両方をともに実施するために、次年度使用額を利用する。
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Research Products
(3 results)