2020 Fiscal Year Research-status Report
教育長の専門性が地方政治における教育政策選択に与える影響解明
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20K22177
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Research Institution | The Graduate School of Information & Communication |
Principal Investigator |
廣谷 貴明 社会情報大学院大学, 先端教育研究所, 専任講師 (70880160)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 教育行政 / 教育長 / 教育委員会 / 専門性 / 民主性 / 教育と政治 / 教育政策 / 地方政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)教育長のキャリアパス分析:各都道府県の地方紙から、2020年度時点の都道府県・政令市・中核市の人事異動データを抽出し、教育長個々人がどのようなキャリアを歩んできたのかを追跡した。その結果、同一時点間で観察したとき、教育長のキャリアに違いがみられるが、同一自治体内で観察したとき、教育長のキャリアは固定化されている可能性が示唆された。ただし、本知見は調査途中段階のものであるため、今後も同調査は継続する。 (2)サーヴェイ調査の準備作業:先行する中央省庁の官僚調査や教育長のリーダーシップ調査から調査票設計を検討したほか、文部科学省から提供を受けた「教育委員会の現状に関する調査」「新教育委員会制度への移行に関する調査」のクリーニングを行った。これらにより、サーヴェイ調査が完了した際に、当該調査と文部科学省データとを組み合わせ、すぐに分析できる態勢を整えた。サーヴェイ調査は2021年8月に実施する予定である。 (3)首長の教育政策選択に対する影響力行使の規定要因:2つの分析を行った。第1に2014年度の首長調査データと2015年度以降の文部科学省データを用い、どのような首長が教育委員会制度移行後に意向通りの総合教育会議運用ができているか、統計分析を行った。その結果、①任期1期目の首長の方が意向通りに教育大綱を策定できなかった傾向にあったこと、②任期最終年の首長の方が意向通りの部局に総合教育会議事務局を設置できた傾向にあったことの2点を明らかにした。当該成果は日本教育行政学会第55回大会にて報告した。 第2に神奈川県横浜市と愛知県豊根村を事例として、教育政策選択のアリーナ、アクターの分析を行った。その結果、教育に関連する施策でも、教育長が参加していない場で政策選択が行われるものもあり、その場合には教育長が専門性を発揮できないことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サーヴェイ調査の準備や首長の教育行政への影響力に関する分析に関しては、概ね予定通りに行えているが、教育長のキャリアパス分析については当初の計画から大きく遅れているために総合的に「やや遅れている」と判断した。やや遅れている理由として以下の2つがあげられる。 第1に、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う、施設利用や移動の制限である。当初の予定として、国立国会図書館や都道府県立図書館へと赴き地方紙を収集する予定であったが、所属研究機関からの都道府県間の移動自粛要請や国立国会図書館利用における抽選制の導入により、資料収集のペースが当初の計画よりも大幅に遅れた。これらのことは新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から致し方のないことであるため、現在は資料収集対象を切り替え、時事通信社のiJAMPを中心にデータを収集している。 第2に、研究機関の異動が当初の予定よりも早まったことである。当初の計画では2021年度より研究機関を異動する予定であったが、2021年1月より異動となった。異動により学内業務に携わる必要が出てきたことから、研究計画作成時点で想定していたよりもかけられるエフォートが少なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)2020年度に引き続き、教育長のキャリアパスデータについて時事通信社のiJAMPから収集を続ける。ただし、iJAMPでは遡ることができる期間が限られているため、iJAMPでは収集できないデータについては各地方紙のデジタル版の契約等の対応策を検討する。 (2)サーヴェイ調査については当初の予定通りに実施する。調査結果についてはResearchmap等のウェブを活用したアウトリーチ活動を行う。 (3)2021年度2月~3月に国立台湾師範大学の王麗雲教授のもとへ訪問し、国際比較研究のための打合せを行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、場合によってはウェブ会議による打合せを行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、所属機関からの都道府県間移動の自粛要請があったこと、及び資料収集先として予定していた国立国会図書館の使用が抽選制になったことから、旅費とその他(資料複写代)について大幅な差額が生じた。また、データ入力補助のための研究補助者の雇用にあてた人件費・謝金についても、資料収集の遅れから執行できなかった。 2020年度に使用できなかった分については、2021年度に実施するサーヴェイ調査を充実させるために使用する。具体的には設問数、サンプル数を増やし、当初計画以上に信頼性の高い調査とすることを目指す。 また都道府県間の移動が今後も困難であることが予想されることから、地方紙のデジタル版の契約費用として使用する。
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Research Products
(4 results)