2020 Fiscal Year Research-status Report
Empirical Study on Private High School Management Facing Social Changes
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20K22180
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
木村 康彦 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00802076)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 私立学校経営 / 教育経営 / 教育財政 / 受益者負担主義 / 学費負担意識 / 教育費負担意識 / 公私混合型教育費負担構造 / 教育劣位社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、私立高等学校が持つ現代の教育政策に対する考え方や現在の経営状況、生徒の学習環境・教育条件の整備状況、危機管理体制などについて調査することで、少子化や教育費の無償化、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大といった社会変動に直面する私立高等学校の経営方針のあり方と今後の教育政策の方向性について考察することにある。 当初計画では、今年度は上記目的に沿ったアンケート調査を行う予定であったが、後述の事情により、実施を延期することとなった。その代わりにオンライン上からアクセスできるリソースを活用して、私立高校を取り巻く社会状況の分析を中心に行った。特に高校の経営方針とも密接に関係するであろう、若者世代の教育費負担意識について、諸外国と比較分析することとした。 その結果、本邦と本邦以外の諸外国の若者で比較したとき、世界各国共通で、経済的・社会的困難な状況であるほど、教育費の公費負担を求めやすい傾向があることが明らかとなった。その一方で、諸外国では社会への不安や不満が高まるほど、公費負担を求める声が大きくなったが、本邦ではその傾向が諸外国よりも小さい。本来ならば、教育費の公費負担を求めたくなるような状態に置かれたとしても、教育費公費負担の必要性を本邦の若者は感じていないようである。公助を求めようとする気持ちが無意識的に抑圧されていることが考えられるほか、先行研究によれば本邦の若者は近年、現状肯定的であるという指摘もあって、それが影響したことも考えられる。 さらに、学校への満足度が高い人ほど、教育費の公費負担に対して否定的な反応が見られた。これは学校への満足度が高まると受益者負担を肯定しやすくなるため、結果として良い教育を提供する学校の出身者ほど、教育費無償化と逆行して、教育費は私費負担でよいという気持ちが強まってしまうのではないかという可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、初年度に調査設計や研究成果報告を行うための基礎資料収集とアンケートによる量的調査の実施を予定していた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっており、調査対象校となる高校が多忙を極めていて、仮に調査依頼を行ったとしても回収率が大幅に低下することが見込まれたことから、調査実施時期を翌年度に延期することとした。また、本研究採択時点において、各種図書館などの利用制限なども継続していたことから、基礎資料収集にも若干の遅れが出ている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は「現在までの進捗状況」欄に記載した通り、残念ながら全体的に研究の進捗が遅れているものの、最近は各種図書館の利用制限も緩和される傾向にあることから、基礎資料収集も追いつきつつある。また、オンライン上でアクセスできるリソースを活用することで、私立高校を取り巻く社会状況分析を進めることができているので、こうした強みを生かしつつ、2021年度にアンケート調査を実施する予定である。データの分析や研究成果公表も効率的に行っていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、2020年度は所属学会の大会がオンライン化したため、研究報告をするためなどの旅費支出がなくなったことに加えて、アンケート調査の実施を翌年度に延期したため、予算の次年度使用をする必要が生じた。今後の使用計画についてだが、アンケート調査は2021年度中に実施する見込みであり、旅費を節約できた分の予算は高度な統計分析ソフトウェアのライセンスを購入する資金に充当して、より精密な調査分析を進めていく予定である。
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