2021 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害児の書いた文章の評価における読み手の情報処理に関する研究
Project/Area Number |
20K22181
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
新海 晃 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (90883918)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 聴覚障害 / 作文 / 評価 / 視線解析 / 情報処理 / 眼球運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、聴覚障害児の書いた文章の評価における読み手の眼球運動特性からその情報処理の特徴について検討を行い、聴覚障害児における文章産出上の課題について整理、考察することを目的としている。 令和3年度(2021年度)は、視線計測装置を用いた作文評価課題の追加実験を実施し、前年度(2020年度)に収集済みのデータを加えて分析を行った。なお、課題に使用した作文(計6編)はいずれも6つの文からなる文章であり、最初の1文と最後の1文を除く4つの文を聴覚障害児が書いて完成したものである。視線計測データの分析から、一般的な日本語文章の読みに比べて、1回あたりの停留時間が短いこと、読み返しの割合が高いこと等が示唆された。また、対象作文間において1回あたりの停留時間に顕著な差は認められなかったが、その他の作文に比べて全体の停留時間や停留回数が多い、読み返しの割合が高い、停留時間の長い注視が生じる回数が多い等のいずれかの傾向のある作文が存在することが明らかとなった。 次に、対象作文を事例的に取り上げて分析した結果、各作文の評価における読み手について、①最後の1文及びそれと関連が想定される語や文節等を中心に注視が集中し結論と結びつく内容を探し出す又は類推する様子にあったこと、②統語的誤りや接続表現の脱落または誤用などを含む語・文に注視が多く理解に一定程度の認知処理を要したこと、③漢字とひらがなで構成される語(例:きょう師)や部分的な漢字使用が認められる文、ひらがな表記により文節区切りが不明確な文などにおいて注視が多く情報の統合が阻害されたこと等が示唆され、さらに対応する評価項目の評定値も低いことが示された。以上から、情報処理に関連した読み手の困難さが明らかとなり、これらの結果を踏まえて聴覚障害児における文章産出上の課題について考察した。
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Research Products
(1 results)