2020 Fiscal Year Research-status Report
A Case Study on Transition Process from Free School to Society and Career Support
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20K22190
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
藤村 晃成 大分大学, 大学院教育学研究科, 講師 (00883159)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | フリースクール / 不登校 / 進路・キャリア形成 / 社会への移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,フリースクールにおける進路支援のメカニズムや卒業後の生活世界に関する事例検討を行うことで,フリースクールから社会への移行プロセスをスタッフや利用者といった当事者の視点から明らかにするものである。2020年度は,(1) 「フリースクールから社会への移行」を捉える新たな分析枠組みの検討,(2)フリースクール卒業生へのインタビュー調査を実施した。 (1)については,フリースクールや不登校支援に関する文献を収集・レビューを行い,本研究の課題を明確にした。日本におけるフリースクールは,公教育制度や学校的価値観を問い直し,既存の学校システムから排除されがちな不登校の子どもの「学校に行かない生き方・選択」を承認する場としての役割を果たしてきた。そのため,フリースクールにおける進路形成を分析する際には,「標準」的なキャリアとは異なる若者の経験や移行プロセスに着目する若者の移行研究の分析枠組みの援用が重要となることが明らかになった。 (2)については,フリースクールXの卒業生へのインタビュー調査を行い,フリースクール在籍時における進路形成のプロセスや卒業後に経験する生活に対する認識を明らかにした。インタビューからは,フリースクールX内のメンバーの日常生活の中で,卒業時の進路決定や大学進学が「成功物語」であるという規範的なトラックが暗黙裡に構築・共有されていることが明らかになった。また,大学進学以外の進路選択をした卒業生は,進学していないことで他の卒業生よりも「遅れている」という感覚のリアリティがあることを語っており,フリースクール卒業後の進路を語る上で,学校的なメリトクラシー概念が密接に関係していたことが明らかになった。これらの分析結果は,日本教育社会学会で報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,研究を開始するにあたって必要な備品を購入し,調査実施と分析のための環境を整備することができた。また,本研究に関する図書や文献を購入し,フリースクールから社会への移行を捉えるための理論的考察や質的調査の方法論を整理することができた。インタビュー調査については,新型コロナウイルス感染症の影響で当初の予定よりも実施人数が少なくなったものの,一定の調査を行うことができ,初年度の目的は一定程度達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,理論枠組みの検討やインタビュー調査の実施を継続しつつ,研究成果をアウトプットする作業を行う。新型コロナウイルス感染症による研究進展の遅れが今後も想定される。他県に赴いて実施する調査や対面でのインタビュー等が困難になる可能性があるため,WEB会議システムを用いた調査の環境整備をより充実させながら予定していた調査に取り組んでいきたい。その上で,学会発表や論文等でのアウトプットに向けた分析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で,他県へ赴くインタビュー調査が実施できなくなったり,参加予定だった学会・研究会等も中止やオンライン開催となったりした。これらの理由により旅費を使用することがなかった。そのため,次年度の使用額として調査等の拡充に活用する予定である。新型コロナウイルス感染症の影響は今後も継続することが想定されるため,WEB会議システムを用いた機器環境の整備を引き続き行っていく。
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Research Products
(1 results)