2020 Fiscal Year Research-status Report
多文化共生社会実現に向けた道徳授業海外協働実践研究
Project/Area Number |
20K22219
|
Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
松田 憲子 神田外語大学, 外国語学部, 准教授 (70874519)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | 多文化共生 / 道徳科 / 教材分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)教科書教材の分析 「共生」する力を育む道徳教材の開発及び指導方法の開発に向け、2020年度は現行の小学校道徳科教科書教材がどのように国際化に対応しているのか、現状を分析した。「日本人が海外に進出する時代(外への国際化)から外国人が日本で共に生活する時代(外から入ってくる国際化)」へと移り変わっているが、それに対応する「道徳資料(教材)が少ない」ことを土田(1998)は課題として挙げている。それから20年、教科書教材は国際化にどのように対応しているのか、現在使用されている道徳科の小学校検定教科書8社、1年から6年までの全ての教材1721本について分析した。全教材の中で、海外に関連する言語や知識等の素材が含まれている教材(以下、海外素材教材)は、295本、その中で実質的な交流が描かれた教材は81本しかなかった。さらに、その中で日本での交流場面を描いた教材は48本と、土田(1998)が副読本の資料分析を指摘した数値とほとんど変わっていないことがわかった。また、交流が描かれている教材の内容項目の半数以上は「国際理解、国際親善」であった。この結果をもとに、今後の教材作成では、共生という視点から「公正・公平・社会正義」「相互理解・寛容」「個性の伸長」「友情・信頼」等をねらいとした交流教材の開発が必要であるという方針をたてた。この分析については千葉大学教育実践研究第24号で報告した。今後学会等でも発表し、発信していく予定である。 (2)英訳教材の作成 海外と日本の双方の小学校で、共通の教材や指導方法を用いた道徳授業の実践的な交流に向け、NHK for schoolの道徳番組「ココロ部!」から「カメラマンの選択」について英語の字幕入り教材を作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、新規教材の作成・指導方法の検討のため、国内の現行の教科書教材の分析と、フィリピンでの教材を収集・分析し、それを生かした新規教材の作成、さらに現地校との打ち合わせを予定していた。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、フィリピンで行う予定であった資料収集や実践に向けての打ち合わせの目途が立っておらず、中断を余儀なくされた。また、国内の小学校における実践も、休校や感染状況などの影響により困難な状況であったなど、実践的な研究が滞っている状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度の教科書分析で明らかになった課題をもとに、多文化共生に向けた新規教材を開発する。教材とともに指導方法を検討し、授業案としてまとめる。授業案をもとに、新規教材について国内での実践を目指し、実践後は児童の意識の変容を分析する。 また、海外の道徳教材を収集・翻訳し、日本の教材との比較検討を行う。比較検討では共生に関わる教材の有無や内容を分析することで、共生する力を育む資質能力を検討する。 国内での実践をもとに海外での実践的な研究に向け、新規教材や既存教材の翻訳など海外で授業する教材の作成を進め、現地校教員と教材や指導方法、具体的な計画について打ち合わせを行う計画である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由については、新型コロナウイルス感染により海外からの資料収集や渡航しての打ち合わせが困難となり、国内での実践についても難しい状況にあったため、それらの費用を次年度に繰り越すこととした。 次年度は資料収集や収集した資料の日本語訳、新規教材の現地語訳、授業実践に向けての機材、海外との打ち合わせに向けての費用を計画している。
|