2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of Teaching Materials for Advanced Japanese History in Senior High School Based on Knowledge of Recent Maritime Asian Studies
Project/Area Number |
20K22220
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
大西 信行 中央大学, 文学部, 特任教授 (10882342)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | 日本史探究 / 海域アジア / 歴史教育 / 日本史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年12月12日にオンラインで開催された日本西洋史学会第70回大会の小シンポジウムVII「歴史教育改革のゆくえ-高校・大学の教育現場の現状と課題、そして展望-」と題するシンポジウム(企画は関西大学中等部・高等部教諭で、本研究の研究協力者でもある矢部正明氏)に、パネリストの一人として登壇し、長年高等学校で地歴公民科の教諭として高校教育に携わり、その傍らで大学の教職課程の科目を担当してきた経験を踏まえて、以下の要旨で報告をおこなった。 今回の高等学校指導要領改正は,既存の地理歴史科の科目構成を大きく変えるだけでなく,「主体的・対話的で深い学び」のかけ声のもと,アクティブ・ラーニングの導入が義務化されるなど,大きな変革を高校の教育現場にもたらすものと捉えられ,その賛否が激しく議論されてきたが、報告者は論争それ自体に違和感を感じている。 その理由は、今回の指導要領改正は現行の、あるいはそれ以前の指導要領の延長線上にあるに過ぎないと考えているからである。2016年12月の中教審総会の資料には,日本史探究や世界史探究(〈 〉内)のイメージとして,「我が国の歴史の展開〈世界の歴史の大きな枠組みと展開〉について,世界の歴史や歴史を構成する様々な要素に着目して〈地理的条件や日本の歴史と関連付けて〉,総合的に広く深く探究する」と記されているが、これらの点については,現行の学習指導要領でも,表現はやや抽象的ではあるが、すでに求められているものである。このことを踏まえれば、いま大学の教職課程に求められることは,現行の概説科目や教科教育法の内容が,この学習指導要領を十分に踏まえたものであったかどうかを検証すること,そして,もし不十分であったと評価しうるならば,真に学習指導要領の内容に沿ったものにすべく再構成することではないかと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の研究計画において、初年度(2020年度)については、既存の中学校・高等学校の教材の収集や年間の授業計画の分析・検討、海域アジアに関する漢文・欧文の史料(地図や絵画も含む)やそれらについての研究論文の収集, そして,授業実践案の作成をおこなう。としていた。 このうち、海域アジアに関する論文集や史料について書籍として公刊されているものについては、概ね予定どおりに収集・調査・研究が進んでいる。写本や版本については、海外のものを含めてインターネット上に公開されているものに関しては所在情報の確認や収集を進め、内容の調査についてもおおよそ終わっている。しかし、入手が難しい図書やインターネットに公開されていない史料・資料の調査のためには、図書館や資料館等に出向く必要があるが、それらについては、多くの図書館や資料館がCovid-19の感染対策として開館・閲覧制限を行っており、健康上の理由で移動もはばかられる状況なので、ほとんど調査を進めることができなかった。そのため、Covid-19の蔓延状況を勘案しながら今年度に持ち越し、調査を進める予定である。 また、授業実践案の作成については、研究協力者との会合については、物理的な距離もあり対面での会合はいまだ困難な状況ではあるが、オンラインでの打ち合わせを4回おこなっており、作成すべき教材の題目・テーマについてはおおよそ15テーマほどに固まり、そのうちいくつかのテーマについては内容の構成も固まっている。しかし、様々な学年・学力層の生徒が興味を持つことができる、汎用性の高い教材案の作成に至っていないのが現状である。その点については、今年度の第1四半期をメドに研究協力者以外の高校教員にも個別に意見を伺い、それをもとに作成を進めていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の申請では、今年度(2021 年 4 月から2022 年 3 月)は,協力者による本研究に基づく授業実践とそのフィードバック,そして具体的な教材集・指導書の執筆を進めていくことと、 その途中経過報告として,国内の研究会やアジア世界史学会(AAWH,2021 年夏にインドのデリーで開催予定)での報告を計画していたが、AAWHの大会は2022年への延期が決まっており、また、Covid-19の感染の現状を考えると、AAWH以外の可能性も含めて国際学会での報告はいまのところ困難といわざるを得ない。一方で、国内の研究会については、オンラインではあるが行われており、研究代表者が世話人を務める大阪大学歴史教育研究会をはじめ、高校教員が中心なって運営されているいくつかの研究会で構想を披露し、実際に授業を行う立場の高校の先生方からの有益な示唆を得るべく報告の機会を探っている。 また、現状の状況下ではなかなか生徒が実際の資料・史料に触れることが難しくなっている。そこで、インターネットの沿革会議システム(zoomやwebexなど)を用いて教室と博物館や民俗資料館などの資史料所蔵機関をつないで対話的な探究授業を行う、「博学連携」の要素も加えた授業実践も計画している。これは、「アフターコロナ」の状況でも、博物館や資料館の資史料や学芸員の専門知識を活用した探究型授業の実践事例参考になるものと考えられる。こちらについては、いくつかの資料館と連絡を取りながら、開催時期を探っている。
|
Causes of Carryover |
購入を予定した書籍の額が残額を超えたため、事務の担当者と相談の上、翌年度に持ち越しました。
|
Research Products
(1 results)