2021 Fiscal Year Research-status Report
大学学生自治会の形成過程に関する研究 ―占領軍・日本共産党の動向を中心に―
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20K22222
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田中 智子 早稲田大学, 歴史館, 助手 (40633566)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 大学 / 学生自治会 / 占領軍 / 日本共産党 / 民間情報教育局(CIE) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は占領期(1945-51年)を対象に、主に①戦後日本共産党関係資料および②日本占領関係資料(主としてCIE関係文書)を用いて、大学学生自治会の成立過程およびその背景を明らかにすることを目的としている。 令和3年度は②について国立国会図書館で追加調査を行ない、研究補助者と協力して翻訳・分析を行なった。その結果、CIEが大学における学生自治および学生自治会に対してどのような見解を持ち、学生自治会関係者にどのような助言を行なっていたかが概ね明らかになった。具体的には、CIEは学生自治会を民主主義の訓練の場と考え、教職員と学生自治会代表の双方が友好的に協力し合って学生自治活動を行なうことを奨励していた。しかし、それはあくまで学生自身に関する問題に限定されており、当時いくつかの大学学生自治会が求めていたような、学生代表の大学の内部行政への参加を認めるものではなかった。学生たちの学校行政参加の要求に対しては、行きすぎであると警戒していたことがCIE文書の中からも読み取れる。 1948年に入り、全国規模の学生運動が頻発し、学生自治会が日本共産党との関係を強めると、CIE担当官と学生自治会関係者との面談は一時的に行われなくなるが、49年以降は主として新設の大学学生自治会や反全学連系の学生自治会・連合組織との面談を行なわれるようになった。そこではCIEは明確に学生自治会の共産主義化に対する危機感を表明しており、共産主義化に対抗しようとする学生自治組織に対して助言したり支援しようとしていたことが調査によって判明した。 以上の研究成果は教育史学会第65回大会にて報告し、同学会の紀要に論文投稿も行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度も新型コロナウィルスのまん延により、遠方への資料調査を控え、国立国会図書館等で入手できる資料の収集・分析に注力せざるを得なかった。この資料調査が十分に行なえなかったという点によって、研究計画にやや遅れが生じる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染状況も落ち着いてきたため、令和4年度はこれまで十分に行なえなかった他機関所蔵の資料調査を行ない、これまで行なった調査・分析の裏づけを行ないたい。本来の計画より1年延長することとなったが、その分さらなる調査・分析を進め、研究の締めくくりとしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、令和3年度に引き続き所属機関から出張自粛要請がなされたことにより、外部機関での調査・資料収集を行うことができず、旅費やその他の費目(複写費等)を執行することができないままでいる。 次年度は感染状況が落ち着きを見せているうちに外部機関での調査・資料収集を行ない、これまで執行できなかった費目を適切に執行したいと考えている。
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