2020 Fiscal Year Research-status Report
歌唱におけるメタ認知的言語と、歌声の音響的・生理的特徴の関係性解明
Project/Area Number |
20K22261
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Research Institution | Osaka University of Arts Junior College |
Principal Investigator |
高橋 純 大阪芸術大学短期大学部, その他部局, 講師 (50883055)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 歌声 / メタ認知 / 歌い手のフォルマント / 音声分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、予備実験として、歌唱技術に関するメタ認知言語を調査するために、音楽大学で声楽を学ぶ学生を対象に歌声に関するアンケート調査を行った。アンケートの内容は「声帯」「声道」「歌い手のフォルマント」などの学術的用語や、「息の支え」「アクート」「パッサージョ」など、声楽指導で一般的に使われている用語についての理解度について調べ、「口の開け方」「立ち方」「お腹の使い方」など、実際にそれらをどのように意識して歌唱しているのかを調査した。 さらに「喉の開き方」「横隔膜の使い方」などの体の内側や、「声の響き」「声の的(方向)」などの目に見えない歌唱中の歌声に対する意識やイメージがどのようなものなのかを「言葉」で表現するように求めた。 その結果、「口を大きく開けるというよりは、奥をしっかり開けるように意識する」「糸で釣り上げられている様に立つ」「声の支えは鳩尾あたりにある」などの「意識」と実際の「動作」を結びつける回答が多く見られ、さらに「横隔膜の動きを意識してお腹を前後に動かす」「声を鼻腔に当てる」「声を頬骨に当てる」「声を前歯の裏に当てる」「鼻の先の15㎝先に集める」「眉間あたりの空間に」のように、歌唱時の身体の動きや歌声に対する感覚を、メタ認知的な性質をもった言葉に変換した回答が得られた。 また、歌唱における歌声の音響的特徴を検討するために、歌声の音声分析の予備実験を行った。優れた歌手の歌声の音響的特徴に見られる「歌い手のフォルマント」の計測方法を検討し、先行研究で用いた2-4kHzのスペクトルのパワーを全体の周波数帯域のパワーで割った「占有率」として算出する方法を改良して計算した。その結果、改めてプロの歌手の歌声に含まれる歌声のフォルマントの占有率が声楽を学ぶ学生よりも高いことを確認し、「占有率」の計算方法をさらに確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、音楽大学で声楽を学ぶ学生を対象に歌声に関するアンケート調査を行い、歌手の歌唱時における身体の動きや歌声に関するメタ認知言語を調査するための予備実験を行った。それと並行して、歌声の音声分析の予備実験も現在進めており、実際に歌声を収録して、歌い手のフォルマントなどの音響的特徴量の抽出方法を検討している。 新型コロナウイルスによる影響で、大学や研究機関において発話実験に対する利用制限が設けられた為、当初の予定よりかは被験者数が少なくなってしまったが、現在までの到達度は、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず歌唱に関するメタ認知言語の調査をさらに対象者を増やして調査するために、webアンケートの作成と実施を検討している。すでに、試作段階のものを数名に実施し、予備調査を行っている為、本格的な調査に向けて準備を進める予定である。 また、歌声の音声分析に関しては、被験者をさらに募り、本実験に向けて準備を進めていく。 当初の研究計画では、rtMRIを用いて、歌手の歌唱における生理的特徴を検討する予定であった。しかし、新型コロナウイルスによる影響で、MRI実験を実施する施設(ATR-Promotions)の利用が1コマ当たり1名に制限され、さらに発話実験の実施可能日が、月に4コマに限定されたことから、予約が困難となっておる。そこで、歌唱に関するメタ認知言語の調査と、歌声の音声分析は予定通り進めていくが、MRI実験に関しては、規制の緩和を待つこととし、研究期間内に実施が難しいと判断すれば、別の実験方法を検討する。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画時に予定していたMRI実験が、新型コロナウイルスの影響で撮影することができなかったため、MRI装置レンタル料と被験者謝礼費を使用しなかった。また、予定していた学会や打ち合わせも新型コロナウイルスの影響で全て中止となり旅費を使用しなかったため。 次年度も新型コロナウイルスに関する状況を考慮しつつ研究費を執行する予定である。
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