2020 Fiscal Year Research-status Report
流暢な読みの背景にある認知神経学的過程の解明:前頭の早期神経応答に着目して
Project/Area Number |
20K22263
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
宇野 智己 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 流動研究員 (40881785)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 認知神経科学 / 視覚単語認知 / 経頭蓋磁気刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,高速な読みを支える認知神経学的基盤の一端を解明することで,読字障害(失読症,発達性ディスレクシア)の早期発見・介入に資する知見を提供することである。近年の知見から,音韻や発話などの高次言語処理に関わると考えられてきた左半球の下前頭回が,視覚単語の提示から極めて早い時間帯(およそ200 ms以内)に活動するという報告が相次いでおり,読みの神経学的モデルの根本的な見直しが迫られている。本研究ではこの早い左前頭の活動の機能的意義を検討する。 本年度は,左下前頭回の早い活動が,文字単語の読みに因果的に貢献するかを検討した。方法として,経頭蓋磁気刺激(TMS)を特定の時間帯に適用し,単語の読みを要する/要さない課題に対する影響を調査した。COVID-19の感染拡大を受け,実験参加者が集まりにくい状況ではあるものの,10名の参加者を対象とした予備的検討を行うことができた。結果として,左半球の下前頭回に対して刺激提示後200 msで磁気刺激を行った際,単語の意味判断課題の成績が悪化することが見出された。一方でこの妨害効果は,読みを要さない統制課題(文字の物理的な色の判断)では生じなかった。これらの結果は,左下前頭回の早い活動が,文字の読みに特異的かつ因果的に貢献することを示唆するものである。この成果については,年度末に開催された国際学会で発表を行った。この研究については令和3年度も継続して実験参加者を募り,学術雑誌への投稿準備を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の感染拡大の影響からデータの収集に当初の予定よりも時間を要しているため,計画よりもやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
磁気刺激を適用する部位や時間帯による影響をより詳細に検討するため,来年度も継続してデータ収集・解析を行う。また,左下前頭回の読みにおける機能的意義を明らかにするための,神経生理学的実験に着手する。
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Causes of Carryover |
本年度の研究は,所属機関に既存の機材で進めることができ,計画よりも物品費が抑えられた。国際学会における発表のために計上していた旅費についても,オンラインでの開催となったため使用しなかった。 次年度では,得られたデータを分析するためのソフトウェア購入や,国際的な成果発表を積極的に進めるための,旅費・論文投稿費として使用する。
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Research Products
(2 results)