2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22266
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山田 千晴 早稲田大学, 人間科学学術院, 招聘研究員 (80878356)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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Keywords | アクション・スリップ / 書字運動解析 / 書き間違いメカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,なぜヒトが意図しない行為をおこなってしまうのかを明らかにするため,実験的に誘発可能な「書字スリップ」とよばれる現象を通してアクション・スリップの生起メカニズムを運動計算論的に解明することを目的とする。2022年度には,初年度に構築した書字動作解析システムの修正・改善を進めたことに加え(課題1),同システムを用いて健常若年者における書き間違い生起メカニズムを検討した(課題2)。 【課題1:マーカーレス動作追跡システムを用いた深層学習による書字動作解析基盤の確立】 健常若年者を対象に実施した行動実験を通して,動画データから書字運動を運動学的に解析するプログラム(初年度に作成)の修正・改良をおこなった。実験では,書字スリップを誘発するための急速反復書字課題を実施し,書字中のペンスタイラスの位置データから効果器先端の最適運動特徴点を抽出した。 【課題2:状態空間モデルに基づく書き間違いの健常モデルの構築】 書字の運動学的要素と感覚情報入力が書字スリップの生起に与える影響を解明するため,健常若年者を対象に急速反復書字課題を実施した。実験では被験者間条件として視聴覚フィードバックを操作し,書字中の上肢および書字軌道が見える群と見えない群,および書字中に生じる効果器と書字面との摩擦音が聴こえる群と聴こえない群を設定した。得られたデータについて,書字スリップ生起前後の運動学的指標の変化に着目しデータ解析をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度には,次に述べる事由により研究に全体的な遅れが生じた。 【課題3:失書患者における書き間違いの脳損傷モデルの構築】 実験実施予定箇所である医療機関では2022年度も引き続き新型コロナウイルス感染症拡大に伴う施設利用制限が緩和されなかった。そのため,脳損傷患者を対象とする実験は未実施である。また,当初当該年度までの研究成果を発表する予定であった国際会議については参加を見送った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は当初予定していた研究期間を延長し,2024年度を計画最終年度とする。これは,以下2つの理由による。 第一に,先述の通りこれまでは医療機関において脳損傷患者を対象とした実験が実施できなかった。今後は実験実施予定箇所である医療機関での施設利用制限が緩和され次第,条件を満たす失書患者を対象に行動実験を実施する。研究全体を通して10名程度のデータを取得する予定である。なお,十分な参加者数が見込めない場合は,取得したデータをまとめケースレポートとして国内誌に発表する。 第二に,研究代表者が2023年度中に日本学術振興会二国間交流事業の特定国派遣研究者として海外での研究活動を開始するにあたり,渡航期間中には国内での本課題遂行を一旦中止する。
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Causes of Carryover |
対人実験の実施が遅れている関係で人件費・謝金の支払い額が減少したことと,国際学会での成果発表をおこなうことができなかったために旅費の支払額が減少した。今後は医療機関での実験実施が可能になり次第対人実験をさらに追加して行うとともに,国際学会や論文投稿を通して成果発表をおこなう。
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