2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22281
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 向社会的行動 / 文化 / 協力行動 / 期待 / チームワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、チームワークでの協力行動を促す要因を文化心理学の観点から検討することを目的としている。他者の期待をより内在化している日本のような文化において、その期待に応えようと思うことは協力行動を促進するとされている。アメリカに比べて、日本においては協力することが期待されていると思うほど、チームワークでの努力意図が高まることをこれまで行った研究で確認した(研究①)。 R3年度では、R2年度に行った研究①の結果を追試することを試み、シナリオを用いた比較文化研究を実施した(研究②)。日本とアメリカの参加者を対象に、スポーツ場面のシナリオを提示し、チームメンバー(受け手)からの協力要請が参加者(送り手)の努力を促す効果は文化によって異なるかどうかを検討した。その結果、研究①で確認された文化による違いが概ね追試され、日本においてのみ、受け手からの協力要請が送り手の努力を促すことが示された。具体的に、受け手からの明確な要請がある場合、努力を期待されていると思う送り手の気持ちが高まることで、実際により努力をしようとするという心理的プロセスが存在することが明らかとなった。この結果から、送り手が自分の期待を明確に示すよりも、受け手はその期待をうまくよみとれるかどうかということの方が協力行動につながるといえる。協力行動を実行する送り手が受け手の求めていることを察知できることの重要性が示唆され、間接的コミュニケーションが顕著な日本文化の特徴を反映していると考えられる。 このような文化による違いを引き起こす要因を明らかにするために、R3年度では、受け手の期待に加えて、文化によって異なるとされている自己のあり方(自己観)を操作する実験を開始している(研究③)。今後は、必要な数の実験データを収集・分析し、因果関係の明確化につながる考察を準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の進捗状況を「やや遅れている」と評価した主な理由は、予定していた実験研究(研究③)のデータ収集が未完了なためである。R3年度に実験参加者を所属機関の学生を対象に広く募集したが、予定した参加者数が集まらなかったため、R4年度もデータ収集を続ける必要がある。集まったデータは現在分析中であるが、参加者数が不十分なため、まだ研究結果を学術論文としてまとめる段階ではない。また、既に行った研究①と②の結果をR3年度中に学術論文として公表する予定であったが、論文を投稿したジャーナルの査読期間が長引いているため、早くてもR4年度での公表となる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究③のデータ数を増やすために、所属機関だけではなく、他の大学でも参加者を募集し、必要なサンプル数を確保する。なお、不足した場合は、研究計画を微修正し、クラウドソーシングなどでデータを取り直すことも視野に入れている。分析が可能なサンプル数を確保できたら、研究結果を学術大会や論文として公表する予定である。これまで行ったシナリオ研究の結果を追試するとともに、文化差の背景に文化的自己観が要因として機能しているかどうかについても、研究③の結果から重要な示唆が得られると考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、実験研究(研究③)で予定していた参加者数が集まらなかったことと、研究①と②の結果をまとめている論文が未公表のため、人件費やオープンアクセス費が未使用となったことである。次年度使用額を主にR4年度に再開予定である研究③の参加者への謝礼に充てることを計画している。また、投稿中の論文が採択された場合、本助成金を使用し、そのオープンアクセス費の一部をカバーすることを予定している。
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Research Products
(2 results)