2020 Fiscal Year Research-status Report
22q11.2欠失症候群の患児の前方視的追跡と早期兆候に対する支援ニードの解明
Project/Area Number |
20K22282
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山内 彩 名古屋大学, 医学部附属病院, 臨床心理士 (50881984)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 22q11.2欠失症候群 / コホート / 前方視的追跡 / 支援ニード / 早期兆候 / 知的能力障害 / 自閉スペクトラム症 / 精神障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
22q11.2欠失症候群は、幼少期から身体疾患に加え、知的能力障害、自閉スペクトラム症(ASD)、統合失調症等の精神障害をともなうことも多いが、精神症状は成長発達の過程や取り巻く環境によって変化して個人差も多様であることから、臨床経過を前方視的に追跡する研究が不可欠である。 本研究では、本症候群患児コホートの認知発達・行動特性や精神症状の前方視的追跡によって早期徴候や支援ニードを把握し、成長・発達段階にあわせた患児・家族への心理社会的介入や支援方略について、実証的・臨床的示唆を与える研究知見を得ることを目指すものである。 2020年度は初年度にあたるが、研究代表者らが2016年より蓄積している患児コホートを用い、ベースライン調査の実施から追跡期間3年に到達した患児およびその養育者の母親を対象としてフォローアップ調査を実施した。本研究への参加同意は予定していたすべての対象児・者から得られているが、初春からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により調査実施を一時休止せざるを得ない状況も生じた。社会情勢を鑑みながら感染防止対策のもとで調査・評価を再開しており、2020年度~2021年度ですべての対象児・者に対して評価を実施する段取りが組まれている。認知発達・精神症状の評価には患児本人・養育者の母親に対して質問紙や面接法を用いて定量的検査を行い、加えて、養育者の母親に対する面接にて患児本人や家族が抱える養育上の問題や支援ニーズに関して聴取を行った。 本研究では認知発達・行動特性や精神症状の出現状況を経時的に検証することが重要であると考えており、ベースライン調査の結果が活用できるようにデータ整理も行い、次年度で解析に着手するための準備にも取り組んだ。コホートの新規サンプリングについても進行中であり、新たに研究同意が得られた1組に対して初回ベースライン評価を遂行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度(初年度)は、本研究で予定していた対象児・者の14組から研究参加の同意を取得することができた。本研究には面接形式で行う評価も含まれているため、COVID-19の影響によって調査・評価の一時休止や延期をせざるを得ない事態が生じた。一方、フォローアップ評価はすでに9組に対して遂行できており、ほか5組についても2021年度前期に評価を実施する段取りは組まれていることから、おおむね順調に進展できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中であるフォローアップ調査は、COVID-19による影響を受けながらも社会情勢や感染予防対策を考慮しながら遂行しており、次年度も研究参加同意が取得できているすべての対象児・者に対して評価を遂行していくことを目指す。患児コホートの新規サンプリングにも引き続き取り組んでいく。また、対象患児の認知発達・行動特性や精神症状の評価は本研究の基幹をなすため、特にASDに関する評価に用いている自閉症診断面接(Autism Diagnostic Interview-Revised)と自閉症診断観察検査(Autism Diagnostic Observation Schedule Second Edition)における評価技術の精度維持・向上に努め、調査・評価の実施体制を維持していく。 本研究に参加同意を得ている対象児・者への調査・評価の終了次第で、データ解析に着手する。本研究の結果データおよびベースライン調査の結果も活用することにより、患児の認知発達・行動特性や精神症状の発生・進行の臨床像、そして患児本人・家族のニーズに応える心理社会的支援の方法を検討していくことが可能となることを期待している。そして、本研究で得られた知見については、学会発表や論文化により公表していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初、初年度に情報収集のため国内学会へ参加予定だったが、COVID-19の影響により参加が中止となった。 研究成果が広く周知されるよう、国内における学会発表や国際誌への投稿を行うための費用として次年度使用する予定である。
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