2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22289
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
竹森 亜美 立教大学, 現代心理学部, 教育研究コーディネーター (90882671)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 書字 / 運筆 / 発達障害 / 感覚特性 / 運動調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,書字につまずきを有する発達障害児の感覚処理特性をアセスメントし,力加減や方向,速度の調節が必要な運筆課題を用いた個別的介入を行うことで,感覚処理特性が発達障害児の書字の熟達化に与える影響を整理する。 2020年度は,2021年度に実施する介入研究のために,アセスメント実施にむけた準備作業・介入プログラムの立案・研究参加者へのアセスメントとパイロット観察の実施が計画されていた。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により対面でのデータ収集が困難となったことから,研究参加者の在籍する公立小学校にて教員がデータ収集できるコンサルテーション型の研究へと研究計画の修正を行なった。 コンサルテーション型の研究では,研究実施者が間接的にアセスメントを行うことができるよう,研究参加者の保護者に記入を求める「日本版感覚プロファイル」と研究参加者が書いたノートや作品のエラー分析を実施する。申請時に使用する予定であった『見る力』を育てるビジョン・アセスメント「WAVES」)は,タブレット端末を使用して対面で行う必要があるため,COVID-19の感染拡大状況を踏まえて使用の可否を慎重に判断する。いずれのアセスメントも,実施にむけたマニュアルの通読,タブレット端末の設定は完了している。 また,プログラムの立案では,竹森・大石(2020)の実証的研究で明らかとなった,筆圧を調節する運筆課題が書字における運動調節能力を向上させる可能性,運動調節能力が向上しても発達障害児の疲労感は依然として残り続ける可能性を踏まえ,課題の選定および評価票の作成を行なった。また,コンサルテーション型の研究で用いる課題および評価票には教示文を組み込んでおり,対面でのデータ収集を教員に依頼しても,課題実施の条件は十分統制されると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により,当初研究を実施予定であった大学実験室に研究協力者およびその保護者を招聘することを見合わせた。また,感染防止措置を優先するため,研究実施者が小学校をはじめとする他機関に出向くことも困難であった。そこで,データ収集を研究参加者の在籍する小学校にて教員に依頼し,研究実施者がアセスメントとデータ分析を行うコンサルテーション型の研究への変更の必要が生じた。 しかし,2021年度からデータ収集を開始するために必要な課題の作成,プログラムの立案,同意書や承諾書,研究説明用のスライドの作成は完了しており,感染防止のガイドラインに沿って研究を実施する手筈は整えることができた。 以上により〈やや遅れている〉と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,感染防止のガイドラインに沿って研究を実施するため,研究実施者が対面でのデータ収集を行わないコンサルテーション型の研究へと実施形態を変更した。そこで,研究参加者およびその保護者だけではなく,所属機関への研究協力の必要が生じた。そのため,研究実施者が継続的に臨床実践を行なっている自治体の教育委員会に研究協力を依頼する予定である。 また,課題実施を依頼する教員の負担を軽減するため,課題実施時の音声や映像を記録して分析することは見合わせる。教員による行動観察と課題実施の成果物から分析することになるが,カリキュラムに沿った行動の直接観察と行動記録を行う手法であるCurriculum-based-assessmentの観点から,通常の学校のカリキュラムの中で無理なく実施・観察できる項目を扱うことは,本研究の成果を学校での指導に還元する上では支障がないと考えられる。 さらに,コンサルテーション形式で研究を行うために,オンラインでのビデオ会議,研究参加者が実施した課題の郵送など,遠隔地とのやりとりが必要となる。これらの予算は,当初音声や映像の記録のために充てていたものから執行する予定である。
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Causes of Carryover |
対面での課題実施の際に音声および映像を記録するための機材の購入を予定していたが,新型コロナウイルスの感染拡大のために対面実施が困難になったため購入を見合わせ,未使用額が生じた。また,大学への出校を最小限に留めるために,データ分析のための謝金も未執行となった。 2021年度は,コンサルテーション型の研究実施のため,20201年6月からはデータ収集とデータ分析,9月からはマニュアルの作成を含む研究成果の公表と,順次予算を執行していく。
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