2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K22289
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
竹森 亜美 立教大学, 現代心理学部, 教育研究コーディネーター (90882671)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 書字 / 運筆 / 運動調節 / 感覚処理特性 / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,公立小学校に通う児童7名を対象に,介入研究を実施した。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止の観点から,研究参加者が利用している通級指導教室の担当教員が研究実施者となった。また,研究計画の立案とアセスメント,データの分析は申請者が行った。 アセスメントでは,研究参加者の感覚処理特性を明らかにするために,研究参加者の保護者に「日本語版感覚プロファイル」への回答を求めた。 介入は,週1回あるいは隔週1回とし,ベースライン2試行・介入3試行・般化1試行の計6試行を原則とした。介入に用いた課題は,ひらがなからその一部を抜粋した図形を用いて申請者が作成した「運筆課題」で,線の濃淡を書き分けることが求められた。また,介入の効果検証のために「迷路課題」を実施し,運筆課題と迷路課題の実施後には,研究参加者に疲労度や慎重さを尋ねる「振り返りシート」への記入を求めた。 日本版感覚プロファイルを実施した結果,すべての研究参加者が,「低登録」「感覚探求」「感覚過敏」「感覚回避」の象限のいずれかで,障害のない人々の上位約2%から約16%にあたる「高い」値となった。また,7名中4名に,障害のない人々の上位約2%以内にあたる「非常に高い」象限が見られた。このことから,通級指導教室の担当教員より書字・運筆の支援ニーズがあげられた研究参加者は,いずれも感覚処理特性に困難さを抱えていることが明らかとなった。 また,「迷路課題」の逸脱率の平均値を分析した結果,研究協力者が独力で実施したベースラインと課題を実施した介入期では,7名中5名で逸脱率の減少傾向が見られた。このことから,本研究で用いた介入方略は,運筆時の運動調節の促進に一定の効果をもたらす可能性が示唆された。 今後は,感覚処理特性と書字運筆活動の熟達の関連について,さらなる分析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大による影響は継続したが,通級指導教室の担当教員に課題実施を依頼するコンサルテーション型の研究計画に変更することで,介入研究を実施することができた。なお,介入研究実施前に,教育委員会担当指導主事への説明,通級指導教室担当教員との打ち合わせおよび実施方法の説明,管理職教員への説明と同意,保護者と研究協力者への説明と同意を丁寧に行ったこと,通常の通級指導教室での指導に影響を与えない頻度での実施を依頼したことなどから,データ収集には当初よりも日数を要した。 以上を総合して、区分『(2)おおむね順調に進展している。』と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,2021年度の介入研究で収集したデータの更なる分析を進める予定である。特に,研究参加者の「感覚処理特性」と「課題の逸脱率」「課題実施時の主観的疲労感」の関連を分析することで,発達障害児の感覚処理特性のうちどのような要因が書字運筆活動に影響を与えるのかを明らかにすることができるだろう。 また,得られた知見から,感覚処理に何らかのつまずきを有する発達障害児の書字学習支援において,効果的な教材や指導方略のヒントをまとめたマニュアルを作成する予定である。これらの結果をもとに,発達障害児の支援に携わる教員などの専門家に対して,報告会・研修会の開催を検討する。また,研究結果は論文としてまとめて公表する予定である。
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Causes of Carryover |
介入研究の開始までに当初の予定よりも日数を要したため,補助事業期間の延長を申請し,2021年度に実施予定であったマニュアル作成および印刷と,報告・研修会の開催を見送った。そのため,印刷や研究成果報告のための学会発表に必要な費用を支出しなかった。 2022年度はマニュアル作成や報告・研修会の開催を検討している。また,9月に開催される日本特殊教育学会第60回大会にて学会発表を行う予定である。
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