2020 Fiscal Year Research-status Report
モデル動物を用いた多動・行動障害の共感性に関する生理心理学的研究
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20K22294
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Research Institution | Jin-ai University |
Principal Investigator |
山岸 厚仁 仁愛大学, 人間学部, 助教 (10881790)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | Tsukuba情動系ラット / 共感性 / 援助行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,主にTsukuba情動系ラットのうち,外界に対して不安様行動を示しにくい低情動反応性を有するTsukuba低情動系(low emotional strain, L系)ラットを対象に,嫌悪状況に晒されている他個体に対する援助行動について検討をおこなった.行動課題では,穴の開いた透明な仕切り板でプール区画と陸地区画に区切られた実験箱を用いた.プール区画に水を張り(深さ4.5 cm),仕切り板の穴は円形のドアで塞がれており,ドアは陸地区画からしか開けることができない構造となっていた.陸地区画に被験体となるラットを放つと同時にプール区画に被験体と常に同居している同性のケージメイトを放ち,被験体の行動を10分間観察した.この課題をL系ラットと対象群となるWistarラットに実施したところ,L系がWistarラットより早くドアを開け,ケージメイトを開放することが示された.この結果から,L系の持つ低情動反応性が向社会的行動に促進的な作用を持つことが示唆される.また,L系の速やかな援助行動の獲得について,狭い拘束管に閉じ込められたケージメイトを拘束管のドアを開けることで開放する行動課題についても検討した.この課題では,ケージメイトを閉じ込めた拘束管を迷路内のゴール地点に設置し,迷路のスタート地点からゴール地点の途中に水たまりを設けていたため,被験体がケージメイトを救出するためには被験体自身が水たまりに侵入し水に濡れる必要があった.この課題においてもL系はWistar系より速やかにケージメイトを救出した.このことから,低情動反応性の持つ向社会的行動への促進的な影響が,向社会的行動の表出に対し自らの負担が増大する場合においても維持されることが示された.本研究成果は今後学会で報告するとともに,学術雑誌に掲載する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Tsukuba情動系ラットは高情動系と低情動系の2系統に大別されており,当初は両系統の援助行動について検討する予定であるが,2020年8月に高情動系の個体数が激減し実験を実施できなかった.そのため,2021年度は低情動系個体のみで研究を進めると同時に,高情動系個体を用いた研究の実施に向け,繁殖に専念する必要があったことから,進捗状況は当初の研究計画より遅延している.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年5月現在,高情動系ラットの個体数が実験実施に支障がない程度に繁殖できているため,今後は行動課題に用いる実験箱を増やし,主に高情動系個体の援助行動に関する行動データを収集するとともに,高情動系および低情動系の援助行動にオキシトシンが及ぼす影響や,共感関連脳領域の神経活性について検討する予定である.また,本研究ではプールに張った水に浸すことによりケージメイトを嫌悪状況に晒しているが,この実験事態では嫌悪度の強さが被験体の援助行動に及ぼす影響について検討することが困難である.そのため,上記の研究と並行し,足元から呈示される電撃を嫌悪刺激として用いた援助行動課題の構築を進めている.現在はWistarラットを用い援助行動の獲得に適したパラメータを探索しているが,今後はTsukuba情動系ラットにも同課題を実施し,行動データを収集する予定である.
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Causes of Carryover |
2020年度8月に生じた高情動系個体の減少により,当初の研究計画より個体の繁殖・維持管理の負担が増えたため,飼育のための物品(固形飼料や処分に用いるドライアイス)を購入する必要があった.他の購入予定物品の購入を次年度に繰り越すなどの調整をした結果,次年度使用額が生じた.次年度使用額については実験課題の実施および飼育管理に用いる消耗品(テープ)の補充に充てる予定である.
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