2023 Fiscal Year Annual Research Report
円形燻り燃焼に現れるパターンダイナミクスの解明へ向けた数理モデリングと数理解析
Project/Area Number |
20K22307
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
小林 俊介 宮崎大学, 工学部, 准教授 (90880980)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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Keywords | 燃焼現象 / 数理モデリング / 力学系理論 / 数値解析 / Kuramoto-Sivashinsky方程式 / 漸近解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,多くの燃焼現象に観測される固体燻焼を研究対象とする.現在までにいくつかの数理モデルが提案されているが,方程式の複雑さや空間次元の高さから数学解析は困難であった.よって,実用上有効な燻焼モデルは構築されておらず,燻焼波面のダイナミクスは数学的に解明されていない.そこで本研究では,新たな燻焼モデルの構築から着手し,解の定性的性質に関する理論解析,高精度・高速度な数値スキームの開発ならびに数値解析などによる多角的視点から研究を遂行し,時々刻々と変化する燻焼波面の挙動の背後に隠された数学的構造の解明を目的とする.
2023年度は,防災や消火の専門家との応用研究を推進し,蛇腹状に折られた紙の燃焼モデルの導出ならびに数値シミュレーションを援用した数理解析に着手した.蛇腹折りろ紙の下方燃焼において,その折幅と燃焼速度の関係性が実験的に考察されている.特筆すべきは,折り幅をある程度小さくすると燃焼速度が極小をとることである.本研究では,燃焼の基礎方程式である Kuramoto--Sivashinsky 方程式の係数に,空間非一様性を有した数理モデルを提案した.そして,燃焼速度が加速される折り幅と減少させる折り幅の双方の存在を数値シミュレーションにより実証した.この成果については,2023年度日本火災学会研究発表会や国際会議ICIAM2023, ALGORITMY2024で発表をおこなった.
研究期間全体を通じて,平面上における燃焼前線の数理モデリング,数値スキームの開発に成功し,論文として出版された.蛇腹領域上における研究成果は,複数の国内会議・国際会議において公表したが,現在論文執筆中である.本研究成果は,衣類の燻焼など現実的かつ応用性の高い問題に対し,燻焼速度や領域変化の定量的評価を計るための数理的基盤整備に繋がると期待している.
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