2020 Fiscal Year Research-status Report
圧縮性流体方程式におけるパターンダイナミクスの数理構造の解明
Project/Area Number |
20K22308
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
寺本 有花 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任助教 (60883262)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 圧縮性流体方程式 / 特異摂動 / パターンダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目的は,流体力学の基礎方程式である圧縮性Navier-Stokes方程式を始めとする準線形双曲-放物型方程式系におけるパターンダイミクスの数理構造の解明とその解析手法の確立である. 反応拡散方程式や非圧縮流体方程式などの放物型方程式系については,中心多様体理論や解析的半群理論などに基づいた有効な数学解析の理論が整備されてきた.一方,圧縮性Navier-Stokes方程式のような散逸構造を持つ双曲-放物型連立方程式系に対しては方程式の持つ双曲型の側面により,放物型方程式に対して確立された解析手法が有効でないため,手法の開発と数理構造の解明が望まれている.本研究では,それらの理論の準線形双曲-放物型方程式系への拡張を行う.そのための一つの試みとして,今年度は熱対流問題の時間周期解の分岐・安定性問題に取り組んだ. 非圧縮熱対流問題において,変数として塩分濃度を追加することにより,静止状態から時間周期解が分岐して現れることが知られている.圧縮性Navier-Stokes方程式の時間周期問題においては虚部がΟ(ε^(-1))の虚軸近傍のスペクトルが時間周期流を引き起こす虚軸近傍の固有モードと互いに干渉するため,定常問題の場合よりも扱いが困難となる.Floquet解析を用いることで,人工圧縮方程式系の一般の時間周期解について,マッハ数が小さい場合に人工圧縮方程式系の定常解からの分岐時間周期解の存在とその安定性を示すことができた.この結果について,論文にまとめ,J. Math. Fluid Mech,.に投稿した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は圧縮性Navier-Stokes方程式を始めとする,散逸構造を持つ準線形双曲-放物型方程式系におけるパターンダイナミクスの解明と解析手法の確立である.そのための一つの試みとして,私はこれまでに主として人工圧縮方程式系に対する解析を行ってきた. その中で,人工圧縮方程式系のHopf分岐の特異極限問題に取り組み,マッハ数が小さい場合に人工圧縮方程式系の定常解からの時間周期解の分岐とその安定性を示した.解のε依存性については明らかにすることができなかったが,静止状態から分岐時間周期解が現れるような熱対流問題に対しては一様評価を得ることができた.この結果について二本の論文にまとめることができた.以上のように研究は概ね順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
時間周期解の分岐安定性について,静止状態でない一般の定常解からの分岐・安定性解析を行う.分岐時間周期解のマッハ数に関する一様評価を導出し,マッハ数が小さいときの人工圧縮方程式系と非圧縮Navier-Stokes方程式系の時間周期解の周りの解のダイナミクスの関係を調べる.圧縮性Navier-Stokes方程式に対しても同様である. 研究を遂行するために,偏微分方程式に対する関数解析的手法,実解析的手法,無限次元力学系などの様々な手法を駆使する必要があると予想され,そのような知識,技術を習得するとともに研究を推進していく.また,セミナー,研究集会等の機会を積極的に利用して関連する研究者と討議することで研究の推進を図る.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により,学会等が全てオンライン開催となり,旅費が必要ではなくなったため.翌年度分と合わせて旅費又は物品購入費に充てる.
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Research Products
(2 results)