2021 Fiscal Year Research-status Report
Infinite dimensional geometry of Kac-Moody groups and integrable systems
Project/Area Number |
20K22309
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
森本 真弘 大阪市立大学, 数学研究所, 特別研究員 (60880747)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | path群作用 / 固有フレドホルム部分多様体 / Kac-Moody対称空間 / Kac-Moody群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初,前年度に得られたKac-Moody対称空間やKac-Moody群と関連する研究結果を可積分系理論に応用することを計画していたが,COVID-19の影響が長期化したことならびに前年度の研究進展状況を総合的に鑑み,前年度に得られた研究結果の論文投稿,およびその結果の精密化に重点を置いて研究を行い,以下に述べる成果を得た. 近年の無限次元部分多様体論の発展に伴い,Kac-Moody群やその一般化であるKac-Moody対称空間という無限次元空間の実態が明らかになってきた.Kac-Moody対称空間のイソトロピー表現はP(G,U)作用と呼ばれるあるpath群作用により記述され,特にUがGの2つの対称部分群の直積であるとき,対応するP(G,U)作用はKac-Moody対称空間のイソトロピー表現と同値になる(Heintze-Palais-Terng-Thorbergsson).このpath群作用の各軌道は,固有フレドホルムという良い性質を満たす.報告者は,この設定の下で,P(G,U)作用の軌道の主曲率を研究し,更に軌道がオースティアな固有フレドホルム部分多様体となる条件を研究した.その結果,過去にC.-L. Terng,U. Pinkall,G. Thorbergssonらが導出した結果を統合・一般化する公式の導出に成功し,更にオースティアな固有フレドホルム部分多様体の具体例を多数構成した.本結果を1つの論文にまとめて投稿し,査読の結果,学術誌 Transformation Groups への掲載が決定した. 上記の結果に加えて,報告者は「path空間の標準同型」と呼ばれる概念を新たに導入し,主曲率やオースティア性に関する上記結果を,Kac-Moody群の場合へ定式化した.本結果は現在,1つの論文にまとめ,arXivにて公開しており,間もなく学術誌に投稿する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,前年度に得られたKac-Moody対称空間と関連する研究結果を可積分系理論に応用することを計画していたが,COVID-19の影響および研究の進捗状況を総合的に鑑み,前年度の研究結果の論文投稿ならびにその結果の精密化に重点を置いた.その結果,上で述べたような無限次元幾何学・部分多様体論における重要な結果を得ることができた.学術誌への投稿も順調に進み,査読者から高い評価を受け,学術誌 Transformation Groups への掲載が決定した.また,紙面の都合上,本論文には書ききれなかった関連問題についても研究を行い,その結果を国際研究集会の会議録としてまとめ出版した.また,報告者が最近導入したpath空間の標準同型の概念は,2つの異なるpath空間の間に自然な同型写像を与えており,無限次元空間の大域構造の研究に応用が期待できる.これらの結果を可積分系理論に応用することまでは至らなかったが,当該年度は大阪市立大学数学研究所が後援する 第13回 日本数学会季期研究所「微分幾何と可積分系」(2022年3月1日~3月21日)の地元組織委員を務め,情報収集や関連研究者との交流に努めた.次年度も,当プロジェクトに関連する研究集会が複数企画されており,報告者も参加を計画している. 以上を勘案すると,当初の計画以上に研究が進展したとまでは言い難いが,当初の計画では予想しきれなかった結果も得られており,また論文出版も決定している.更にそれに続く新たな結果も得られており,プレプリントとしてarXivにアップしている.尚,これらの結果は他研究者からも高い関心を得られており,報告者は当該年度に招待講演を4回(国際研究集会3回,国内研究集会1回)行い,講演録も作成・出版した.以上を総合的に考慮し,研究が概ね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,現在プレプリントとしてarXivにアップしている論文(上述)を仕上げ,学術誌に投稿することを優先する.その後は,当初計画した可積分系理論への応用を目指す.ソリトン理論において,柏原正樹氏,神保道夫氏,伊達悦朗氏,三輪哲二氏らによる理論や,C.-L. Terng,K. Uhlenbeckらによる理論が確立されており,どちらの理論においてもKac-Moody代数やループ群作用をはじめとする無限次元空間が現れる.しかし,これらの理論は独立に研究されることが多く,それらの相互関係については未だ明確でない.報告者のこれまでの研究におけるKac-Moody対称空間やKac-Moody群の知見をもとに,両理論の関係を明らかにすることを目指す.また,報告者のこれまでの研究により,無限次元path空間(ヒルベルト空間)内に,オースティア部分多様体をはじめとする特殊な対称性を持つ部分多様体が,当初の想定以上に非常に多く存在することが分かってきた.これらの性質・分類や,他分野への応用を明らかにすることも,本研究課題と関連した重要な問題であり,上記研究と並行して行うことを計画している. 以上の研究を推進するために,書籍や論文だけでなく,関連する研究集会への参加,他の参加者との交流を通して,最新の情報収集に努める.特に,本学数学研究所では,昨年に引き続き 第13回 日本数学会季期研究所「微分幾何と可積分系」と関連する国際研究集会が開催される予定であり,報告者も参加を計画している.また,COVID-19の感染拡大状況や世界情勢に注視した上で,国内外の出張を計画し,関連研究者との研究討議・情報交換を計画したいと考えている.状況に応じてオンラインも活用して研究を推進したいと考えている.
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響が長期化し,海外渡航が困難な状況が続き,また多くの研究集会がオンラインにより実施されたため,旅費の余剰分として次年度使用額が生じた.次年度は,感染拡大状況および世界情勢を見極めながら,対面での研究討議・研究集会参加のために出張を計画しており,その旅費や滞在費に助成金を充てることを予定している.また,次年度はキャンパス間の移動や国内外の出張が見込まれるため,移動先や出張先においても円滑に研究が進められるように,電子書籍の購入や,紙書籍の電子化のための機器の購入にも充当することを計画している.
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Research Products
(8 results)