2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22323
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高 燕林 筑波大学, 数理物質系, 助教 (50847051)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | ナノ炭素物質 / 電界効果 / ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高効率な電界電子放出源の候補であるグラフェンやカーボンナノチューブ(CNT)等のナノ炭素物質に注目し、量子論に立脚した計算物質科学の手法を用いて、電界放出時に発生する、種々のナノ炭素物質やそれらと異種物質からなる複合系の構造ダイナミクスの理論解明を行う。具体的に強電界下におけるナノスケール物質のグラフェン、グラフェン薄膜の構造変調を解明する。そのために、まず、グラフェン、グラフェン薄膜の電界下で電子放出現象について、密度汎関数理論を用いて静的な理論解析を行った。特に、グラフェン端、グラフェン薄膜からの電界放出電流と端近傍における電界分布の解析を行い、高い放出電流を与える端形状、吸着官能基種、及びエッジモルフォロジーの提示を行った。
その結果、アームチェア端からの電流密度が一番大きく、ジグザグ端からの電流密度が一番小さいこと、電流密度は電界強度に比例することが明らかになった。また、電界放出電流密度のグラフェン端に吸着した官能基依存性について調べ、OHやNHといった双極子を有する官能基吸着による電界放出電流密度の増加を予言した。さらに、HやOH付加端においては、強電界印加により、端の外側の真空領域への電子染み出しを引き起こし、その電子分布が電界による電子放出に対して、放出を妨げるポテンシャルバリアとして作用することを示した。 グラフェン薄膜からの電流密度については、薄膜からの電界放出電流密度は、単層グラフェンからの電流密度より増大することを示した。さらに、電流密度は薄膜端の原子配列に強く依存すること、すなわち、端のずれやアームチェア型の端からの電流密度が高いことを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算機の購入と設定を完成し、計算の対象の種々の端を有するグラフェンやグラフェン薄膜のモデルの準備をでき、電界下におけるグラフェン端やグラフェン薄膜子ダイナミクスを行い、それらの安定性を明らかにし、来年度の研究の準備を完成した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今まで計算で得られた結果の解析を行い、電界下でグラフェンとグラフェン薄膜の構造変化に伴う物性変調を解明し、電界による構造と物性の制御方法を提示する。同時に、得られた知見を統合し、定常電界下での反応の基礎学理を構築する。また、その学理を基盤として、安定で高い効率を有する電子放出源の端や表面形状、そこに吸着させるべき官能基種ならびに官能基形状を理論的に予測し、ナノ炭素物質を用いた電界電子放出デバイスの理論設計を行う。
|