2020 Fiscal Year Research-status Report
第一原理計算応用に向けた量子回路パラメータの効率的な初期化方法の構築
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20K22330
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
御手洗 光祐 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (50855111)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 量子コンピュータ / NISQ / 量子アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
量子コンピュータは、従来の計算機では計算リソースの問題で表現が難しい量子状態をも生成できると期待されており、この特長を用いれば、テンソルネットワークなど最近の手法でも困難であった量子系を解析できるようになる可能性がある。近未来の量子デバイスを量子系の解析へと応用する手法としては、 variational quatnum eigensolver (VQE) が有力である。これは量子コンピュータ上に生成したパラメータ付きの量子状態を使って、変分的に近似基底状態を探索するための手法であるが、実応用にはいまだ多くの課題を抱えている。その中でも重要な課題として、パラメータの初期値を効率的に決定する手法を構築するというものがある。これまでの実験実証・数値検証の報告の多くでは、ランダムな初期化しか行われてこなかった。本研究は、摂動論的アプローチによって、効率的な初期化手法を構築することを目標とした。 本年度はその理論構築と数値シミュレーションの実装に取り組んだ。特に、古典コンピュータによって効率的にシミュレーションできる量子回路であるクリフォード回路を摂動の始点とする理論を定式化した。またその定式化をもとに数値シミュレーションを実装し、1次元水素鎖をモデル系としてその有効性を検証した。当初初期化方法の構築を目標としていたが、検証の過程で通常の量子回路シミュレータでは困難な領域でも近似解が得られることが明らかとなり、VQE の性能評価法としても有用であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り摂動論的なパラメータ初期化手法を構築し、その数値検証まで進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
021年度は本年度に作成した数値検証プログラムを用いて他のモデル系に対して VQE の性能検証を行っていく。また VQE 以外の変分量子アルゴリズムに対しても本手法が適用可能か検討し、可能であればその数値検証を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染症によって旅費が必要なくなったため、未使用額が生じた。翌年度助成金とあわせて数値検証に向けた計算機購入を行う予定である。
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