2020 Fiscal Year Research-status Report
高しきい値反応を利用した高速応答気体電離箱型ビームロスモニターの開発
Project/Area Number |
20K22339
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
山口 雄司 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究職 (10882970)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | ビームロスモニター / 高しきい値反応 / 検出感度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,大強度パルスビームを供給する加速器施設において,粒子生成標的からの生成粒子に由来するバックグラウンド(BG)事象に影響されないビーム損失検知を可能にすることを目的としている。目的を達成するため,ビーム損失事象とBG事象を識別可能なロスモニターを開発し,性能試験をおこなうことを計画しており,2020年度ではロスモニターの設計検討,製作及び性能試験のシミュレーションを実施した。 設計検討においては,ビーム損失事象とBG事象との識別に必要なビスマス薄膜の適当な厚さを見積もった。ロスモニターに設置するビスマスは陽子,中性子との高しきいエネルギー反応によって信号を生成するが,その確率は高くない。そこで,薄膜の厚さの増加に対する検出感度の変化をシミュレーションにより求めた。これによって検出感度が,ある薄膜厚さで飽和する傾向を示すことがわかった。ロスモニターの製作においてはこの結果を反映し,最適な薄膜厚さを選ぶことができた。 性能試験のシミュレーションでは,ビーム損失事象とBG事象の識別に適した信号を選択するために,信号の波高分布を計算,解析した。信号源ごとに成分を分離した結果,識別に適した信号は,ビスマスの高しきいエネルギー反応に由来する成分を主とした高い波高領域に分布していることが明らかとなり,低い波高の信号については遮断する必要があることがわかった。このシミュレーションで得られた結果は,今後の性能試験において重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,開発するロスモニターの設計検討,製作を完了させた。また,性能試験の予備的な検討にも着手できていることから,おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
事前の検討で得られた知見を活かし,製作したロスモニターの性能試験を実施する。ビーム損失事象とBG事象の識別において重要な検出感度,信号の時間応答について調査し,実用のための動作条件等を明らかにしていく。得られた成果については,学会等で発表する。
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Causes of Carryover |
計画において購入を予定していた真空機器を,既存の設備を使うことで代用できたため,購入を見送った。これにより,次年度使用額が生じた。次年度使用額については,令和3年度経費と合わせてロスモニターの性能試験に必要となる計測機器の購入や学会発表等の旅費の一部として使用予定である。
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Remarks |
2020年度量子ビームサイエンスフェスタにおいて,今年度得られた成果を発表した。
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