2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of the large-scale silicon tracker for precision measurement of Higgs boson properties at HL-LHC
Project/Area Number |
20K22346
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
廣瀬 茂輝 筑波大学, 数理物質系, 助教 (40875473)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / シリコン検出器 / LHC |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、ITk検出器用シリコンストリップセンサーの量産中の特性研究を行った。本年度は1,784枚のストリップセンサーを製造、2021年度納入分と合わせて、必要枚数の約6割となる合計3,568枚の量産を完了し、それらすべての形状および電気的特性が良好かつ一様であることを確認した。昨年度3月に計画していたITkへの陽子照射試験は、装置に不具合により行うことができなかった。よって、本年度はまず陽子照射試験に必要な装置の再製作を行い、正常な動作を確認した。これを用いて7月に照射試験を実施した。この際には、合計41枚というこれまでに経験のない枚数のサンプルに対する照射を行ったが、すべて照射に問題なく、特性にも異常が見られないことを確認できた。本年度は1月にも28枚のサンプルに対する照射を行い、合計69枚のサンプルを得た。以上のような大量のストリップセンサーを用いた測定結果からは、これらが単にITk検出器における要求値を満たすだけでなく、最大1.6×10^15 n_eq/cm^2相当の放射線量を受けた後も、製造時期に関わらず非常に一様な電気的特性を示すことを確認できた。この結果は、高輝度LHC-ATLAS実験におけるITk検出器運用に対してのみならず、他の素粒子実験プロジェクトにも有用なものであり、日本物理学会およびシリコン検出器に関する複数の研究会において結果を報告した。また、現行のATLAS検出器から得られる知見も、高輝度LHCにおけるITk検出器の安定運転に欠かせないと考え、ATLASシリコンストリップ検出器(SCT)のデータを詳細に解析した。特に、SCTから得られたデータを用いて、TCADシミュレーションによる放射線損傷後のシリコン検出器モデルを構築した。まだ不定性は大きいものの、これを用いて今後2025年までのSCT検出器の性能予測が可能であることを示した。
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