2020 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical research on Nambu-Goldstone dark matter
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20K22349
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤間 崇 金沢大学, GS教育系, 助教 (60786325)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 擬ゴールドストーン粒子 / 暗黒物質生成機構 / Freeze-in機構 / インフレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
擬ゴールドストーン粒子が暗黒物質となる単純な模型が先行研究において提案されている。この模型において暗黒物質と通常の物質の間の相互作用は、ニュートリノの微小質量生成の観点から自然に小さくなることが期待される。この点に着目し、擬ゴールドストーン暗黒物質の初期宇宙での生成機構を議論し、現在の宇宙における残存量を定量的に評価した。また宇宙最初期に起こったとされるインフレーションとの関連も議論した。加えてU(1)B-Lゲージ対称性に基づく拡張模型を構築した。この拡張模型は今後の研究において、大統一理論に基づくさらなる拡張を考える際の基準の模型となる。 大域的レプトン対称性が自発的に破れるときに現れるマヨロン粒子は擬ゴールドストーン粒子である。一つのシナリオとしてステライルニュートリノが暗黒物質であると仮定し、通常の物質との相互作用が非常に小さい場合に、電弱対称性の自発的破れ、関連する粒子の質量に対する有限温度効果を取り入れた残存量の詳細な計算を行った。またステライルニュートリノのみを素粒子標準模型に加えた非常に単純な模型において、微小ニュートリノ質量、暗黒物質、バリオン生成、インフレーションという標準模型に欠けている部分を全て含む模型を提案した。加えてステライルニュートリノの質量に対する繰り込み群方程式を2ループレベルで導き、質量パラメータのエネルギー依存性の詳細な計算を行った。 以上の研究成果は既に5本の論文として出版されている。また当該研究代表者だけでなく、共同研究者による国内や国際研究会における積極的な研究発表がなされ、当該研究成果の周知がなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画における一部の課題「擬ゴールドストーン暗黒物質が非常に弱い相互作用をする場合の残存量の評価」については、当該研究により解明され既に論文として出版されている。また当初の研究計画には含まれていなかったが、当該研究対象である擬ゴールドストーン粒子に関連する研究も行い、いくつかの研究成果が既に論文として出版されている。残された研究課題「大統一理論に基づいた擬ゴールドストーン暗黒物質を含む拡張模型の構築」と「擬ゴールドストーン暗黒物質が熱浴から比較的早く脱結合する場合の初期宇宙と現在の宇宙での振る舞い」については現在研究進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究において提案された擬ゴールドストーン粒子が暗黒物質となる単純な模型に対して、大統一理論に基づいた拡張を行う。このときゲージ結合定数の統一が起きるエネルギースケール(大統一スケール)と、擬ゴールドストーン暗黒物質の性質の間にどのような関連があるかを調べる。これまでの考察から、特に大統一スケールが比較的低い場合には暗黒物質の寿命が短くなると期待される。このときに暗黒物質の崩壊から生じる粒子が模型に対してどのような制限を与えるか、将来実験での検証可能性を議論する。 一方、初期宇宙において擬ゴールドストーン暗黒物質が比較的早い段階で熱浴から逸脱する場合に焦点を当て、現在の銀河に残存している暗黒物質の量を定量的に見積もる。先行研究によると、関連する媒介粒子の消滅過程も暗黒物質の残存量の計算に影響する点が指摘されていることから、この点に注意し正しく評価する。通常の物質の熱浴中での温度と、暗黒物質と媒介粒子を含む暗黒セクターの温度の時間発展を議論する。さらに、この枠組みの中で宇宙線観測を通じた暗黒物質の検出可能性がどのように影響するかを議論する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の拡大により、学会や研究会への参加、研究打ち合わせ等のための旅費が使われなかったため。次年度も引き続き出張が制限される考えられることから、高性能ワークステーション等の購入により、研究実行速度の上昇を図る。
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