2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22353
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
陳 たん 国立天文台, 重力波プロジェクト, 特任研究員 (20888086)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 重力波 / キャリブレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題に対して、昨年度は主に2つのタスクが進められた。 1つは、KAGRAでのメインの較正手法であり、本研究課題で提案しているTcalの重要な比較対象であるPcalの精度の確認である。2020年4月に行われたKAGRAとGEO600との国際共同観測(O3GK)のデータの分析や、新たに富山大で行った試験によりPcal自体にはO3GK当時3%程度の誤差があり、さらに干渉計モデル誤差なども加えると、O3GKで得られた再構築済データは全体で10%の誤差があったことがわかった。 もう1つは、上記O3GKデータを用いたFiber起因熱雑音の分析であり、これまでに次のことが判明した。熱雑音起因のモードのピーク値を個別に分析するのは周波数分解能の面から現実的でなく、全てのピークを包めたエネルギー分析を行うことが、現実的であり計算値との比較においても利点がある。簡易モデルによる熱雑音計算とTcal信号(=O3GKデータにおけるFiber熱雑音)がファクターの範囲で一致した。時間変化補正を行っていないO3GKデータにおいて、Pcal信号と、Tcal信号の時間変動に強い相関関係(相関係数0.98)が見られた。 さらにこれまでの研究によって、Pcal信号とTcal信号の比例係数が1.4程度で想定の1よりもズレている、Pcalの最低次信号の時間変化がPcalの最低次以外の信号・Tcal信号と逆相になっている、次期観測O5に向けてはPcalの改善(干渉計へ与えるノイズの改善が必要、誤差の改善余地有)が必要などの課題点も得られた。 現在は、前記の課題点への対処と共に、次のステップである熱雑音の数値計算のための準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの世界的蔓延により、外部研究者とのface to faceでの議論ができなかったが、リモートでの議論を継続的に行い、Pcal精度の見積もりとO3GKデータの分析を進められた。特にPcal信号とTcal信号に強い相関を予想通り発見できたことは、本提案手法Tcalが物理的に実現可能である事を示すための重要な進歩だと言える。 Pcal信号を元に時系列で時々にTcalを較正した場合の、Tcalの精度評価も計画しているが、Pcal信号データ及びTcal信号データをすでにO3GKデータから抽出しており、評価に必要なデータはすでに揃っていると考えている。 さらに、数値計算による理論的な確認に向けても、ハード・ソフトの準備、それに以前に使用していた熱雑音計算用ソースコードの確認をすでに始めている。 以上のように、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、上記課題点への対処を行いつつ、数値計算による理論的な確認、Tcalの精度評価を行い、最後に成果をまとめる予定である。 課題点に対しては、KAGRA較正チーム内の連携を強め、O3GKにおけるPcalによる較正ロジック、Tcalによる較正で使用しているロジックの再確認を行う。 理論的な確認においては、以前に使用した熱雑音計算用ソースコードを現状に合わせてアップデートを行う。ここでは基本的には、KAGRA懸架系の細かい構造の変更を以前に使用したモデルに適用していくのみで、大きな変更は必要ないと考えている。 Tcalの精度評価に関しては、すでに抽出したO3GKにおけるPcal信号データ・Tcal信号データを元にして分析・評価を行う。時系列上で時々Pcal信号を使って較正し、Pcal信号較正の合間はTcal信号で較正を行うことで、Tcalの相対的較正の精度評価を行う。 上記方策に対して、現在は重大な問題は見つかっていなく、研究計画作成時の目標を達成する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度では、新型コロナウィルスの世界的蔓延により、学会や打ち合わせのための出張が一切できなかった。 また、有限要素法計算よりも、Pcalの調査改善作業・Tcalのデータ分析を優先した。 以上が2020年度の使用額が計画よりも少なかった理由である。 2021年度では、計画されている理論的な確認に加えて、これにまでに見つかった改善点(Pcal信号とTcal信号の比例係数のズレ、Pcalの最低次信号とTcal信号の逆相問題、次期観測O5に向けてのPcalの改善)への対処に対して予算を使用していく予定。
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