2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K22353
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
陳 たん 国立天文台, 重力波プロジェクト, 特任研究員 (20888086)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 重力波 / キャリブレーション / 熱雑音 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザー干渉計型重力波望遠鏡では、装置の応答を調べ較正して、干渉計信号を歪み(strain)信号へ再構築する必要がある。観測中に重力波が飛来した場合にはこのstrain信号に重力波信号が含まれることになる。本研究では既存の3つの較正手法とは全く異なる熱雑音を利用した較正手法(Tcal)の開拓をテーマとした。重力波望遠鏡に現れる機械的熱雑音は、新たな絶対的較正の第一標準となり得る。 本研究では、まず、Tcalの重要な比較対象であり、現存手法の1つであるPhoton calibration method (Pcal)の精度を調査した。結果、大型低温重力波望遠鏡KAGRAのO3GK観測運転では、Pcalのハードウェア誤差が3%程度、最終的なstrainの誤差が10%程度であることがわかった。またKAGRAで使用されている較正装置の改善点も見つけることができた。 次にKAGRAのO3GKデータを分析し、主鏡を支えるサファイヤファイバーを起因とするバイオリンモード熱雑音(=今回対象とするTcal信号)の観測運転中の時間変化を抜き出し、Pcal信号と比較した。その結果、Tcal信号とPcal信号には強い相関(相関係数0.98)が得られた。これは熱雑音が標準になり得ることを意味し、熱雑音による望遠鏡較正の可能性を見出した。 さらにTcal信号が確かに熱雑音であることの確認として、簡易モデルによる熱雑音計算を行い比較したところ、Tcal信号とファイクターの範囲で一致した。その上、各要素の機械的損失の実測データを用いて、数値計算を行い、より現実に適した温度依存の熱雑音計算を行なった。 現状の結果を用いて、論文の執筆を始めることができた。
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