2020 Fiscal Year Research-status Report
プリニー式噴火に先立つ火道へのマグマ上昇現象の発生条件の解明
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20K22357
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新谷 直己 東北大学, 理学研究科, 助教 (80880103)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 火山噴火 / マグマ / 斑晶メルト包有物 |
Outline of Annual Research Achievements |
R2年度は、有珠火山において現地調査を実施し、歴史時代噴火の岩石試料を採集した。有珠火山における有史最大規模の噴火である1663年噴火については、複数のサブユニットにわけた詳細なサンプリングを実施できた。浅間火山、薩摩硫黄島火山については、コロナ禍で出張が自由に行える状況ではなかったため、所属研究室などで過去に採集していた岩石試料を使用することにした。 これらの岩石試料について、研磨試料を作成した。これまでに浅間火山の噴出物について詳細なSEM観察とEDSによる化学組成分析を行った。斑晶メルト包有物の主要元素組成は、SiO2で約70wt%であり、反射FT-IR法の検量線が適用できる組成範囲であることがわかった。また、EDSの測定からは、おおよそ3~4重量%程度の水が含まれていることが示唆された。ただし、水の分析にあたっては、FT-IR法などを用いてより正確に測定することが今後必要である。斑晶鉱物の累帯構造の様子から、顕著な逆累帯構造が観察されたため、噴火の直前にマグマ混合が起きていた可能性が示唆された。浅間火山でもプレチャージ現象が起きていたとすれば、マグマ混合現象との前後関係を詳細に検討していくことで、噴火発生メカニズムの理解が進むことが期待される。薩摩硫黄島火山の噴出物は、同一の噴火の噴出物であっても発泡度に著しい違いが見られたことから、試料の特徴を十分に加味した上で注意深く分析を行う必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
R2年度はコロナ禍の制限により出張などが大きく制限され、浅間火山と薩摩硫黄島火山については現地における岩石試料採集を実施することができなかった。所属研究室などで過去に採集していた岩石試料を使用することにしたものの、薩摩硫黄島火山についてはサンプル数が不足している。薩摩硫黄島については、島外との往来に強い制限が設けられており、現在保有している岩石試料のみで研究を遂行しなければならない可能性が高い。有珠火山については、予定通り岩石試料採集を実施できた。 斑晶鉱物および斑晶メルト包有物の主要元素の化学組成分析は順調に実施できている。一方、斑晶メルト包有物の含水量分析は、出張の制限により、予定通りに実施することができなかった。ただし、これについては学内で含水量分析を実施できる目処がたったため、解決できる見込みである。国内外の火山・噴火事例についての文献調査は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、分析試料を更に作成して、十分な数の分析を実施する。斑晶メルト包有物の含水量分析にあたっては、東北大学理学研究科で実施できる見込みがたった。コロナ禍で出張が大きく制限されてきた中で、同じ大学内において含水量分析を実施できる見込みが立ったことは、研究遂行上大きなメリットである。本研究で対象としている珪長質なメルトについては、検量線が作成されてあり問題なく分析ができているため、分析試料の作成後速やかに分析を実施できる体制となっている。また、本研究室に波長分散型EPMAが導入され、塩素といった微量な揮発性成分の分析を不自由なく行える体制となった。 これらの分析の結果に基づき、珪酸塩メルトに対する水の飽和溶解度に基づいて、噴火直前の平衡圧力を精密に決定する。各火山の地殻密度を用いて、噴火直前の平衡圧力をマグマ蓄積深度に換算する。この深度が、物理観測で捉えられているマグマ溜まりよりも浅い場合にはプレチャージ現象が起きていたと判断し、同程度かそれよりも深い場合にはプレチャージ現象は起きていなかったと判断する。上記の精密な含水量分析に加え、国内外のプリニー式噴火について数十例程度の文献調査を行い、鉱物の化学組成や元素分配を利用した地質圧力計を利用して噴火直前の平衡圧力を計算し、同様にプレチャージが起きていたかを調べる。そして、プレチャージ現象の有無と噴出量・火山体浅部構造・噴火口の特徴・広域応力場などの関係を整理・比較検討し、発生条件を解明する。
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Causes of Carryover |
R2年度に薩摩硫黄島の現地調査を行う予定であったが、新型コロナウイルスが全国的に流行していたために地元自治体から来島を控えるようにと要請があり、薩摩硫黄島の現地調査の費用をR3年度に持ち越したため。
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Research Products
(1 results)