2021 Fiscal Year Annual Research Report
プリニー式噴火に先立つ火道へのマグマ上昇現象の発生条件の解明
Project/Area Number |
20K22357
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新谷 直己 東北大学, 理学研究科, 助教 (80880103)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 火山噴火 / マグマ / 噴火メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、大規模で爆発的な噴火であるプリニー式噴火に先立ち、マグマ溜まりから浅部の火道へとマグマが上昇している現象「プレチャージ」が発見された。マグマ上昇のダイナミクスに基づくと、本現象がその後の噴火の規模、すなわちプリニー式噴火の発生を支配している可能性が高く、その発生条件の解明はプリニー式噴火の発生メカニズムの理解や噴火の開始予測に直結する。本研究では、(1)プレチャージ現象が発見された桜島火山の歴史時代噴火において、プレチャージ現象やその他に噴火のトリガーとなりうる現象のタイミングの解明と、(2)他の火山でも同様の現象が発生しているのかについての検証を行った。 (1)について、磁鉄鉱の拡散時間の計算からプレチャージ現象のタイミングを見積もったところ、噴火の数十日前に起きていたことがわかった。また、噴火の有力なトリガーとされるマグマ混合のタイミングを輝石の逆累帯構造から見積もったところ、噴火の数十年以上前に起きていたことが示された。プレチャージ現象が最終的なトリガープロセスに関与している可能性があり、その発生を検知することが噴火の発生を予測する上で極めて重要である。(2)について、物理観測によってマグマ溜まり位置が特定されている浅間火山を対象とした。浅間火山1108年噴火の軽石中の石基ガラスと斑晶斜長石リムの相平衡関係からメルトの平衡含水量を見積もったところ、2.1wt%であった。マグマが水に飽和していると仮定すると、飽和圧力は43MPaとなる。これは、物理観測により推定されているマグマ溜まり圧力よりも低い。浅間火山ではプレチャージ現象が起きていたこと示唆しており、本現象は大規模な噴火に先立ち普遍的に起こる可能性がある。
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