2021 Fiscal Year Research-status Report
界面活性剤の吸着・脱離・粘弾性を考慮した液膜形成・崩壊のAMR法による数値解析
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20K22388
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松下 真太郎 東京工業大学, 工学院, 助教 (20883036)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 弱圧縮性気液二相流計算 / 界面活性剤 / AMR法の複数GPU実装 / Spurious current / 粘弾性流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,(1)運動量保存性を担保した気液二相流計算手法のAMRコードの整備,(2)PLIC法およびHeight function導入による界面で生じる非物理的速度であるspurious currentを抑制した表面張力評価の導入,を行った.当初の予定では濃度パラメータを関連させた界面活性剤輸送モデルの導入を計画していたが,適切なカップリングモデルの実装に難航しており,粘弾性パラメータと比較して表面張力が液膜安定性に与える影響が大きいことが施行計算で明らかとなり,spurious currentを抑制しなければ液膜の高精度計算が困難であると判断し,手法の改善を試みた. (1)については,AMR法および動的領域分割を導入した複数GPU計算が可能な弱圧縮性気液二相流計算コードに対し,問題に対応したテキストベースの入力ファイルを用意することで,複雑形状・境界条件・各種パラメータ等の様々なケースに対応させた.これにより将来的なコード開発のコストを大幅に軽減できる.動的領域分割を導入したAMR法による弱圧縮性気液二相流計算手法に関しては,Journal of Computational Physicsにて出版済みであり,東工大スパコンTSUBAME上で128GPUを用いた計算で81%の弱スケーリングを達成している. (2)については,よりシャープな界面表現が可能であるPLIC法を採用することで薄膜をより少ない格子で解像することが期待される.表面張力評価にHeight functionを組み合わせることで,従来手法と比較すると静止液滴問題にてspurious current が1/10程度まで軽減できることが確かめられており,非物理的な液膜崩壊を防ぐことが期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
薄膜の崩壊の際にはspurious currentのような非物理的速度が与える影響を無視できず,粘弾性より影響が支配的な表面張力評価の精度向上を試みた.その結果,粘弾性モデル・界面活性剤の輸送モデル各々の実装および検証は完了しているものの,当初の予定であったf-FENE-Pモデルにおける粘弾性の濃度パラメータと界面活性剤の濃度の関係付けは,関連するデータの少なさと流動の複雑性から難航しており,2022年度も継続して課題に取り組む.運動量保存性を担保した弱圧縮性気液二相流計算手法のAMR法実装は完了しており,コードの整備によって様々な入力設定ファイルを用意することで,容易に種々の計算を実行可能な準備が整っている.液膜崩壊の支配的要因である表面張力の高精度化に関しても,計算を進めていく中で必要と判断された項目であるが,PLIC法を導入した計算手法の導入とHeight functionの導入によって概ね問題を解決することができたが,液相・気相別々の方程式を解く必要が生じるなど,手法改善も要され,当初予定と比較して時間を費やすこととなった.
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Strategy for Future Research Activity |
f-FENE-Pモデルにおける粘弾性の濃度パラメータと界面活性剤の濃度の関係について引き続き適切なモデルの検討を行う.それらのモデルを,より高精度化な表面張力評価を採用した弱圧縮性気液二相流計算手法に導入し,モデルパラメータが液膜安定化・崩壊に与える影響を考察する.粘弾性と界面活性剤を連成した計算が困難である場合,粘弾性流体モデルと界面活性剤モデルの両者の輸送方程式を同時に高精度で解くことで,粘弾性と界面活性剤の効果を含んだ液膜計算を実施する他,shear -thinningやshear-thickeningを考慮した非ニュートン性流体の粘性モデルとの連成も検討する.実装完了後には液膜を含む計算として,いくつかの現象を対象に数値シミュレーションを実施する.重力下で液中を上昇し,液面で安定化する液膜はほとんどの流体数値計算で再現できていないため,本研究課題で再現を試みる.シャボン玉成長過程を界面活性剤と粘弾性モデルを導入して実現し,数値計算で再現可能な範囲を拡大する.東工大スパコンTSUBAMEを利用した大規模計算を,粘弾性・界面活性剤の輸送方程式を高精度に解くAMR法を導入した複数GPUによる計算コードを用いて実施することで,液膜内流動まで高精度に解く液膜シミュレーションを実現する.
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大防止の動きが引き続きとなり,国内外の学会すべてがオンライン開催となったことで旅費としての支出がゼロとなった.当初予定では2021年度中に大規模計算まで実施する計画であったが,粘弾性・界面活性剤の濃度パラメータのカップリングに難航したことで大規模計算をほとんど実行できなかったことにより,スパコン使用料を次年度に繰り越すこととなった.次年度は大規模計算のためのスパコン使用量と各種データ保存用記憶媒体,計算コード開発に用いる周辺機器等の購入費,論文出版費用に割り当てる予定である.
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