2020 Fiscal Year Research-status Report
全身に生物規範機構を搭載した四脚ロボットによる高効率ダイナミック運動の実現
Project/Area Number |
20K22389
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
佐藤 隆紀 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特任研究員 (10883572)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | 脚ロボット / 生物規範機構 / 筋腱複合体 / ダイナミック運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,動物の筋骨格構造を規範とした機構を全身に搭載した四脚ロボットを開発し,動物のような高効率な運動,ダイナミックなロコモーションを実現することを目標とする.本年度はまず,研究代表者がこれまでに提案・開発したロボット脚の,大腿部と下腿部の生物規範機構がロボットの運動に与える影響を検証するために,1脚ロボットモデルを用いた動力学シミュレーションを実施した.これらの機構は,動物のダイナミックな運動への貢献が大きいとされる筋腱複合体の機能を工学的にロボットの機構として再現したものである.シミュレーションでは,ダイナミックな運動の一例として垂直跳躍運動を取り上げ,跳躍高さ最大化を目的とした跳躍軌道生成を行った.機構の評価のために,大腿部と下腿部の機構の有無を変更したモデルで同様の軌道生成を行って,運動の特長や関節の出力変化を比較することで,生物規範機構が跳躍運動に対して効果的に作用していることを明らかにするとともに,それらが模倣対象の筋腱複合体と類似した機能を持つことが明らかになった.1脚ロボットの実験用試作機を開発し,シミュレーション結果に基づいた跳躍実験を通して,生物規範機構を搭載したロボットで動物のようにしなやかな跳躍運動を実現した. 次に,これらの生物規範機構を前脚と後脚に搭載した四脚ロボットの開発に取り組んだ.四脚ロボットの動力学モデルを構築し,消費電力低減を目的に前述の生物規範機構の機構設計パラメータを最適化した.その結果に基づいて機構の詳細設計を行って,四脚ロボットの脚部に導入した.このロボットは本研究課題の基盤となるものであり,今後全身に渡って生物規範機構を追加して実験を行うプロトタイプである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,動物の脚部の大腿部と下腿部に備わる重要な筋腱複合体を規範とした機構が脚ロボットのダイナミックな運動に及ぼす影響を,シミュレーションおよび試作機を用いた実機実験を通して検証した.また,本研究課題で用いる四脚ロボットの基盤を開発し,脚部の生物規範機構を四脚ロボットに合わせて最適化設計し,実装した.当初の予定では,体幹部の生物規範機構の設計まで行う予定であったが,次年度の計画に組み込むことにした.一方で,当初は次年度に行う予定であった,脚部機構の関節間協調動作によるロボットの運動性能向上について前倒ししてシミュレーション検証をすることができた.結果は,多関節間にまたがる筋腱複合体の存在の重要性を強調しており,今後の生物規範機構の設計指針を得ることができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に開発した,脚部に複数の生物規範機構を有する四脚ロボットを用いて,設計の妥当性の検証と,前進・後退,脚屈伸,跳躍などの基本的な動作でのエネルギー効率を評価する.次に,動物の脊椎周辺に備わる筋腱複合体の機能に基づく生物規範機構を導入して,これまでに用いた軌道生成手法を拡張することで全身を使った高速走行や跳躍運動の運動生成を行う.脊椎の伸屈による走行速度や移動エネルギー効率への影響を検証する.最後に全身に生物規範機構を搭載した四脚ロボットを用いて,高効率歩行と走行や跳躍などのダイナミック運動を実験する.
|
Causes of Carryover |
当初の予定では,本年度は四脚ロボットの全身の生物規範機構の設計・開発を行う計画であったため,その部品購入や加工依頼費用として計上する予定であった.しかし,本課題内容にかかわるシミュレーションを進める中で,脚部機構が運動に与える影響がより明確になり,次年度に行う予定であったシミュレーション検証を実機を作る前に実施したほうが効果的だと判断した.そのため,実機開発に充てようとしていた経費の一部を次年度に繰り越すことになった.また,参加を予定していた学会の中止などに伴い,参加費に充当しようとしていた経費も繰り越すことにした. これらの繰越金は次年度請求額と合わせて,ロボットの改良のための部品購入および加工依頼に使用する計画である.開発・改良するロボットを用いて1つ1つの生物規範機構の運動への影響を実機検証する.最終的に,すべての機構を統合したロボットを開発して,シミュレーションおよび実験を行い,その成果を国際会議で発表,または学術雑誌へ論文を投稿する計画であり,それらの旅費や投稿費に使用する.
|