2020 Fiscal Year Research-status Report
四足動物の2種類のギャロップ歩容を形成する力学原理の数理的解明
Project/Area Number |
20K22392
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
上村 知也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80881789)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 四足動物 / ギャロップ歩容 / シンプルモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
四足動物は,高速走行時にギャロップ歩容を用いる.この歩容は,チーターのように体幹を曲げ伸ばしする2種類の飛翔期を持つロータリーと,ウマのように体幹を曲げる飛翔期のみを持つトランスバースに分類される.本研究では,体幹の曲げ伸ばしに着目し,2種類のギャロップ歩容を動物がっ選択的に用いるメカニズムを明らかにするのが目的である. 本年度はまず,チーターの体幹の曲げ伸ばしがどのように高速走行時に影響しているのかを明らかにするために,数値シミュレーションによって定性的な理解を行うことにした.脚の運動を線形の直動バネで近似するSLIPモデルに基づく平面2脚モデルを用いて,体幹の運動が水平方向の速度に及ぼす影響を調べた.その結果,モデルは体幹をチーターのように大きく動かす周期解と,体幹運動が小さい周期解を持つことが明らかになった.また,体幹を大きく動かすほうが直感に反してエネルギー効率が高いことに加え,床反力が小さく身体への負担が小さいことが明らかになった.すなわち,チーターは体幹を大きく動かすことによって,高速運動を効率よく達成している可能性が示唆された.得られた結果は国内学会である第21回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会で発表を行い,現在学術論文を執筆中である. また,チーターのギャロップにおいて2種類の飛翔期を持つ力学原理を追求するため,床反力を撃力で近似するモデルを構築し,解析的に求めた周期解から2種類の飛翔期を得る条件を求めた.この結果をまとめた論文をScientific Reports誌に投稿し,2021年5月5日に掲載された. また,上記論文で扱ったモデルは上下の運動と体幹の曲げ伸ばし運動のみに着目していた.このモデルではチーターの運動については説明ができたが,ウマの運動については説明がつかなかった.これらの動物の運動を統一的に説明できるモデルを構築に取り組んだ.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画においては,本年度は従来の解析モデルを改良し,身体全体のピッチ方向回転を含んだモデルの周期解を解析的に求め,2種類の歩容が生成される動力学的なメカニズムを明らかにする予定であった.しかし,シンプルなモデルの動力学を考えるにあたって,脚が剛体として地面に衝突する近似した場合のモデル化が想定していたよりも複雑であったため,予期していたよりも多くの時間を費やすことになった.
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では想定していたよりも課題の進捗が遅れているが,モデル解析の問題点は解決されつつあり,今年度中に周期解の導出と,2種類の歩容を形成する動力学的なメカニズムが明らかになると予想される. また,モデルの解析結果と動物の走行データとの比較を行いモデルの妥当性を検証する.モデル解析から得られた2種類の歩容形成条件が,チーターとウマのそれぞれで成立することを確認する.この結果から,2種類の歩容が存在し,動物がこれらを選択的に用いる力学原理が,飛翔期の種類に着目した周期解の存在条件から説明できることを明らかにする. ただし,チーターとウマの走行データはすでに得られており,周期解が導出されたら比較検討を行う準備は整っている.
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Causes of Carryover |
論文投稿から採録決定が遅れたため,論文掲載料として計上していた金額が余った.新年度になってからScientific Reports誌に掲載が決定したため,この論文掲載料として使用した.
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Research Products
(3 results)