2020 Fiscal Year Research-status Report
機械加工による濡れ性の変化を利用した細胞培養マイクロ流路デバイスの開発
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20K22405
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyota College |
Principal Investigator |
神永 真帆 豊田工業高等専門学校, 機械工学科, 助教 (20879986)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 切削加工 / 濡れ性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,切削や3Dプリントによるマイクロ流路デバイス作製における課題である,加工面の表面微小形状を流体制御に利用することで,外部装置を用いることなく,複雑な処理が可能なマイクロ流路デバイスを作製することを目的とする.当該年度においては,表面微小形状と濡れ性の関係の調査を行った.工具径,切削経路の間隔,加工方向を変えてアクリル樹脂を切削し,各条件における水の接触角を測定することで濡れ性を評価した. マイクロ流路デバイスを作製する際に,表面微小形状を工夫することで機能性を与えている先行研究はいくつか存在するが,それらと比較しての本研究の特色は,加工時に発生する表面微小形状を,そのまま機能性の付加に利用している点にある.これにより,追加処理を行う必要がなく,製作にかかる時間を短縮することが可能となる.また,ガスやプラズマを用いた処理の場合,流路の床,壁,天井を区別して処理することは難しい.しかし,この方法ではそれらを区別して処理することができる.これが可能となることで,流路形状や流路壁の濡れ性を変化させ,外部装置を使用せずに液体の輸送,流路切替を実現することができる.その結果,外部にポンプやバルブを取り付けることなく実験ができるようになることで,より幅広い環境での実験が可能となる.これにより,極限環境等の実験室では再現できない環境における細胞実験が可能となり,新たな知見が得られる可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては,表面微小形状と濡れ性の関係の調査を行った.工具径,切削経路の間隔,加工方向を変えてアクリル樹脂を切削し,各条件における水の接触角を測定することで濡れ性を評価した.その結果,切削経路の間隔および切削方向を変化させることで,濡れ性を向上できることが明らかになった.しかし,基になる材料の特性自体も濡れ性に大きく影響するため,表面微小形状の変更単体では付加できる濡れ性の変化の幅に限界があることが分かった.マイクロ流路デバイスに使用するシリコーン樹脂は元の性質が疎水性であり,疎水性を向上させることはできても親水化することは難しい.そこで,今後は真空紫外線照射による表面改質と切削による表面微小形状変更を組み合わせることを検討している.これが可能となることで,提案手法を用いて流体制御に必要な親水性,疎水性両方の性質をマイクロ流路デバイス内で実現することが可能となり,外部装置を用いない流体制御を実現できることが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで,切削加工のみによる濡れ性の変更を検討してきた.しかし,基になる材料の特性を超えて濡れ性を変更することは困難であることが判明した.そこで,デバイスの作製に使用していた,真空紫外線照射による表面改質と組み合わせることで,より広い範囲の濡れ性を実現する. さらに,それを用いて外部装置を用いない流体制御手法の開発に取り組む.毛細管力による,外部装置を用いずに液の輸送や,流路のうち一部のみの濡れ性を変えることによる気液界面の発生位置制御に取り組む.また,液体の流れのみで受動的に流路切替できるバルブの開発にも着手する.さらに,開発した流体制御要素を組み込んだマイクロ流路デバイスを作製し,細胞培養実験を行うことで,その有効性を確認する.
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