2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22406
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
大木 優介 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (70882760)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | アストロダイナミクス / 制限三体問題 / 軌道設計 / 衛星探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、惑星の衛星近傍に滞在する際に着目されている、疑周回軌道(QSO)において、安全性・観測性・軌道維持・軌道遷移など、実際の探査機運用で不可欠な要素を考慮し、実用的な軌道設計・誘導制御法を研究することである。本目的に対して、ここまで、フルエフェメリスの実際の摂動下において、2D-QSOの軌道振動を非線形最適化によって最小化することで、安定性の高い軌道生成・維持方法を提案した。そして提案した軌道生成・維持方法が、実際の運用上も衝突・離脱可能性が極めて低い安全な方策であることを、統計的シミュレーションにより実証した。また対象天体の軌道面に対して面外成分を持つ3D-QSOへ、本軌道生成・維持方法を拡張した。2D-QSOから分岐させる形で3D-QSOの解空間を精査して、安定性の観点で取りえる解空間の範囲を明らかにするとともに、天体の観測性・安全性・消費燃料のトレードオフ解析を実施した。このトレードオフ解析結果は、運用者が3D-QSOの選択をする際、宇宙機制約の中で理学観測を最大化させるために有用な情報となる。これらの解析により、安全性・観測性などの観点で運用に対し実用的な軌道設計・維持方法を、2D,3D両方のQSOにおいて達成している。また、低高度のQSOが重力場推定に寄与する構造を明らかにする準備として、はやぶさ2における実測値の解析も実施した。はやぶさ2では、搭載していたローバーを小惑星周りに周回させる運用を行った。このローバーを例に取り、軌道周回方向や軌道周期が、重力ポテンシャルの係数推定に対して当たる影響を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、フルエフェメリスの実際の摂動下における2D-QSOの振動を最小化することで、衝突・離脱可能性が極めて低い安全な軌道生成・維持方法を提案し、統計的シミュレーションにより実証した。また面外成分を持つ3D-QSOに本軌道生成・維持方法を拡張し、3D-QSOの解空間を精査して、天体の観測性・安全性・消費燃料のトレードオフ解析を実施した。これにより、安全性・観測性などの観点で運用に対し実用的な軌道設計・維持方法を、2D,3D両方のQSOにおいて達成している。また、低高度のQSOが重力場推定に寄与する構造を明らかにする準備として、はやぶさ2における実測値の解析も実施した。はやぶさ2ローバーの周回を例に取り、軌道周回方向や軌道周期が、重力ポテンシャルの係数推定に対して当たる影響を明らかにした。これらは全体の実施計画の2020年度分の項目であった。従って、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画にのっとり、今年度は低高度QSOにおける軌道設計・維持方法を検討する。これまでのQSO軌道設計・維持方法とはやぶさ2の低高度軌道における重力場推定への寄与の解析を融合し、低高度QSOでも安全かつ、重力場推定に貢献できる運用方策を構築していく。また、今年度の解析過程で、特定の軌道高度間における遷移軌道では、不安定性が増大し運用安全性を脅かす課題も明らかになった。遷移軌道についてもその安全性を解析し、QSO間移動の含めた運用全体の実用的な軌道解の提案を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で旅費を使用せず、その分論文のオープンアクセス化に充てたため、差額が生じた。差額は次年度旅費等に使用する予定。
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Research Products
(4 results)