2020 Fiscal Year Research-status Report
平面二次元分散波方程式を用いた洪水流・河床変動解析モデルの開発
Project/Area Number |
20K22427
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
五十嵐 善哉 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (80881698)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | 平面2次元分散波方程式 / 河床変動解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年、激甚化している豪雨災害に対して、より的確な避難誘導や河道管理の提案に活用できる、高精度で計算不可の比較的小さい洪水流・河床変動解析の開発を目的としている。河道管理においては、上下流バランスの議論が不可欠のため、水系単位(広範囲)で氾濫や堤防決壊リスク箇所を明確にする必要がある。 以上の研究目的を達成するため、本年度の1つ目の成果として、分散波方程式を用いた平面二次元洪水流・氾濫流モデルの開発および荒川流域への適用を行った。令和元年東日本台風では、荒川水系の入間川流域だけでも6箇所で堤防決壊が生じた。本研究では、この6箇所すべてを含む範囲を、詳細に解析しつつ、計算不可を小さくするため、河道内および堤防周辺、氾濫域のみを詳細領域として設定し、10mのメッシュサイズで解析している。この詳細領域において、静水圧近似を行わない、非静水圧項を考慮可能な平面2次元の分散波方程式を開発し、適用した。特に、地盤の凹凸の大きい箇所では非静水圧成分が卓越するため、静水圧近似では誤差が大きくなる。そのため、改良した平面2次元分散波方程式を活用した解析手法と、従来の静水圧近似による解析では、特に河床地盤高の差が大きい低水路と高水敷の間での最大流速に大きな差が生じた。このことから、改良した解析手法では、砂州や高水敷の低水路際での洗堀量の解析において精度向上が期待される。 2つ目の成果として、非平衡流砂量式を用いた河床変動解析について、初期モデルの開発が完了した。ただし、当初の想定通り、河道内植生の割合が多い河川では、植生の根の緊縛力などの影響で実際の浸食量を再現できていない。そこで、すでに開発済みの河道内植生の流出判定解析を組み合わせることで、上述の課題が解決可能だと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、研究実績の概要で述べた2点(分散波方程式を用いた平面二次元氾濫流モデルの開発および荒川流域への適用および非平衡流砂量式を用いた河床変動モデルの導入)の他に、他の解析モデルとの比較から、開発した数値解析モデルの適用範囲を明らかにすることを計画している。以上の3点のうち、1点(分散波方程式を用いた平面二次元氾濫流モデルの開発および荒川流域への適用)は完了しており、もう1点(荒川流域への適用および非平衡流砂量式を用いた河床変動モデルの導入)については、初期モデルの開発が完了している。すでに開発済みの河道内植生の影響を考慮する解析手法と組み合わせることで完了する。以上より、研究計画の進捗状況としては当初の計画以上に進展しているものの、解析手法の開発段階では学術雑誌等への投稿が難しく、本年度は投稿が叶わなかった。そのため、区分としては(2)おおむね順調に進展しているが妥当と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに、分散波方程式を用いた平面二次元洪水流モデルの開発と、荒川流域への適用、非平衡流砂量式を用いた河床変動解析の初期モデルの開発を行った。今後は、主に以下の3点について研究を推進していく。 1つ目は、河床変動解析の初期モデルに、根の緊縛力を考慮した洗堀計算を組み込む。具体的には、GISによる河道内植生の分布と、底面せん断力から計算するWOI(多年生草本等の洪水等による流出指標)を活用する。 2つ目は、分散波方程式を用いた平面二次元洪水流モデルに、河床変動解析の改良モデルを組み合わせて、分散波方程式を用いた平面二次元の洪水流・河床変動解析モデルを構築する。その後、令和元年東日本台風の実績データとの比較から本解析の精度について検討する。 最後に3つ目は、本研究で開発した平面二次元分散波方程式の解析モデルを準三次元、三次元の解析モデルと比較し、適用可能な現象と適用が難しい現象(計算精度が低い現象)を明らかにする。特に、単一樹木周りの局所洗堀等は平面二次元解析では再現が難しい可能性があるが、それが堤防決壊リスク箇所の選定にどのように影響するかも含めて明らかにする。準三次元モデルとしては内田・福岡(2012)の準三次元解析法を用いて、すでに堤防越流等の解析は可能な状態にある。また、三次元解析としてはiRICを用いるが、こちらも簡単な計算については実施済みであり、使用可能な環境は整っている。
|