2020 Fiscal Year Research-status Report
ステンレス鋼を桁端部へ適用した高耐久橋梁に向けた異種金属接触腐食抑制手法の提案
Project/Area Number |
20K22434
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
蓮池 里菜 琉球大学, 工学部, 特命助教 (80886218)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 異種金属接触腐食 / ステンレス鋼材 / 炭素鋼材 / 突合せ溶接 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,鋼橋の劣化要因の一つである腐食を防ぐため,耐久性に優れたステンレス鋼を橋梁桁端部にのみ適用し炭素鋼と併用した,LCCに優れた高腐食耐久性橋梁の実現に向け,ステンレス鋼と炭素鋼の接合部で発生が懸念される異種金属接触腐食の抑制手法の提案を目指している. 初年度である令和2年度は,試験体形状および促進条件を決定するため,各々にパラメータを設け検討を行った.促進条件については,通常の促進試験に用いられる恒温恒湿器を使用した乾燥と湿潤の繰り返しサイクルに加え,橋梁桁端部が曝される環境の特徴の一つである高湿度環境を模擬するため,湿潤環境下の時間を長くした繰り返しサイクルを検討した.また,塗布する塩水の塩分濃度にもパラメータを設け,塩化物による腐食と異種金属接触腐食それぞれを検討できるよう配慮した.本検討より,促進試験環境として異種金属接触腐食が起きやすい条件の適用を目指し,湿潤環境下の時間を長くした繰り返しサイクルを採用した.また,異種金属接触腐食による腐食程度と特性を明確に把握するため,塗布する塩水の塩分濃度はClイオン濃度0.1%および約0.03%(水道水相当)の2パターンとすることとした. これらの検討結果を基に,使用鋼材及び溶接余盛形状の異なる溶接試験体に対し,腐食促進試験を実施した.促進試験後の外観,さび厚計測結果および,SEMならびにマイクロスコープを用いた断面観察の結果より,使用する炭素鋼材の材質により,腐食性状が異なる可能性が示唆された.一方,溶接余盛の有無については明確な違いは確認されなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度中に,大気暴露試験と自然電位の測定を開始する予定であったが,感染症の流行に伴い暴露試験場への移動が困難であったことなどから,遅れが生じている.一方,試験体の断面観察については主に令和3年度実施予定であったが,先行して実施できていること,更に,試験体形状の決定が早まり令和3年度に発注予定であった試験体の作成が概ね完了していることから,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の成果より明らかとなった,炭素鋼材の材質により異種金属接触腐食性状が異なる可能性について,自然電位の計測ならびにさび組成分析よりその要因を明らかとする.また,試験体の作成は完了していることから,大気暴露試験を高飛来塩分環境である沖縄県内と,飛来塩分の影響の少ない山口県内にて実施する.これら大気暴露試験と並行し,さび組成ならびに自然電位測定に向け,腐食促進試験も実施する.各種試験および分析結果から,ステンレス鋼と炭素鋼の大気腐食環境下における異種金属接触腐食性状を明らかとし,その抑制方法を提案する.
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Causes of Carryover |
感染症の流行に伴い,暴露場への旅費として計上していた予算が使用できなかったため.本年度は暴露試験を開始するため,当初計画通り旅費として使用する予定である.
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